週に一度の栄光へ
7月4日、石田健大はこの週2度目のお立ち台に上がった。
前回ヒーローインタビューを受けたのはたったの2日前、3連戦の初戦だった。そしてこの日は3戦目。先発のルーキー大貫が5回まで2失点の好投。その後を継ぐ形でのリリーフだった。
3イニングを投げ被安打1、対戦打者は9人。石田は相手バッターを寄せ付けない、完璧な投球を見せた。最後の打者を併殺打に打ち取った際にはグラブをポンと叩き、小さく一吠え。マウンド上では飄々としていて表情を変えない左腕の感情表現は、チームだけでなくスタジアム全体を活気づかせた。イニングを重ねるにつれ増していく石田コール。さらに、バッテリーを組んだ戸柱や代打出場の中井のホームランが飛び出した際には、スタンドの至る所から歓声が上がった。
ヒーローインタビュー内で「中継ぎ陣を休ませられて良かった」と話した石田。思えばプロ入りから先発完投は一度もなかった。中継ぎに負担をかけざるを得なかった経験に、思うところもあったのかもしれない。そして今の彼は、言わば先発から負担をかけられる位置にいる。だが「大貫の後だったので、一点も取られないという気持ちでマウンドに上がった」と笑顔で答えた石田からは、任された仕事を全うできたことに対する充足感がうかがえた。
中継ぎとしてヒーローインタビューを受けるチャンスはそう多くない。リリーフは「先発の勝ちを消すことは許されない」「抑えて当たり前」と言われる立場。加えて登板回数の多さが、中継ぎ投手のお立ち台の機会の少なさに繋がっている。その中で週に二度もヒーローになるというのは、リリーフとしての石田の活躍が目立ち、また認められている証拠だろう。
一方で、先発投手は勝利数とお立ち台の回数が比例する場合が多い。活躍がお立ち台と直結するのだ。先発は投球数が多いため、次回の先発まで中6日、ちょうど一週間の間隔を空けるのがプロでは一般的である。一週間に一度、必ずヒーローインタビューを受ける投手。それは素晴らしい先発投手であることの何よりの証となるのではないか。
ラミレス監督は「最終的には先発に戻す」と石田の先発再転向を明言している。ある意味で、先発復帰への試金石と言えた今回の登板。試合後のインタビューで監督は「今、石田はコンディション的にもベストな状態にある」と評価した。これが及第点だったのかどうかは、今後自ずと分かってくるはずだ。
先発投手として受けるヒーローインタビューと、中継ぎとしてのお立ち台。石田が望むのは前者、将来的な先発への復帰である。彼が週に一度、お立ち台で歓声を浴びる姿を見るのは、果たしていつになるのだろうか。