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【note】有料記事が売れない理由を考えてみた


どのくらい売れるのか?

文章を書く作業はとても孤独だ。

少し大袈裟な表現かもしれないが、あたかも修行僧のように他者とのコミュニケーションを一切遮断して、自分の心の声とだけ向き合う必要がある。

少なくとも自分の場合は、話しかけられたり意味のある音声が耳に入ると考えがまとまらなくなってしまう。だから自分の世界に入り込んで黙々と作業をしている。

それは例えて言うなら一人旅の心境かもしれない。傍からは孤独に見えるかもしれないが、実のところ書いている本人はとても楽しいのだ。

最初は楽しいだけで書いていたnoteも記事を書くことに慣れてくれば、有料記事を書いて販売してみたい、あわよくば生活費を稼げるくらいにならないだろうかと夢を抱くようになるのは自然の流れだ。

しかし、有名人でもない一般人がnoteで食べていけるほど十分な売り上げを確保するのはなかなか困難なようである。

「文章を書くことが楽しいことと、それでお金を稼ぐことはまったくの別物である」
と捉えた方がいいのかもしれない。

みかんさん

その辺の懐事情については、最近noteクリエイターのみかんさんが記事にされているのが参考になる。

みかんさんは、資産運用によってFIREを達成し、昨年末にサラリーマンを早期退職されたクリエイターさんだ。現在は1年間の充電期間を設けて将来の活動の方向性を模索している最中とのことだ。退職後は、料理の習得に加えて有料記事の販売、個別相談活動にも精力的に取り組まれているようだ。
みかんさんは、物事をしっかり考える力とその後の行動力がずば抜けた人のように思える。
せっかく素晴らしいアイディアが浮かんでも、それを実行に移さなければ何も状況は変わらないが、note記事で知るみかんさんの行動力は傍から見ていて清々しいほどだ。

みかんさんの印象

そのみかんさんが記事で次のように書かれている。

私は先日投稿した記事でnoteに投入した時間は、少なく見積もっても480時間と書いた。仮に私の記事が全て500円で100本売れたとしたら5万円となる。
※手数料を加味するともっと少ない。
5万円÷480時間=時給104円
東京都の最低賃金は1,163円なので、最低賃金の10分の1以下となる。ブラック企業も真っ青だ。

「noteの時給は100円。どうしてnote」収益化したいの?」より

まず、有料記事が100本も売れていることに驚きだ。しかし、それを時給換算すると100円になってしまうのは別の意味で衝撃的だ。

いや、薄々はわかっていたことだ…。

仮に有料記事だけで生活することを考えた場合、500円の記事を年間10,000本売って500円×10,000本=500万円なので、年間10,000本くらいは売る必要があるだろう。

みかんさんなら将来そんな高みに到達する可能性があるかもしれないが、一般人にはとても無理そうな数字だ。

高草木陽介さん

偶然にもみかんさんと同じ日にKindle本の収益に関する記事を書かれているクリエイターがいる。高草木陽介さんだ。

高草木陽介さんは、現役の医師でありながら医師の枠には留まらない多才な活動を展開しているクリエイターさんだ。大変な読書家であり、コンパクトにまとられたその感想文がnote記事の柱の一つになっている。短期間のうちに若手医師向けシリーズのKindle本を三冊もリリースしたのには驚かされた。また、最近では本職の医学分野での講演の他、資産形成、論文の書き方に関する講演も展開されている。
高草木陽介さんは、名門私大を中退し医学部を受験し直して医師になった異色のキャリアからもわかるとおり、とてもクレバーな方と見受けられる。裏では相当の努力をされているのだろうが、それを感じさせずに新しいチャレンジをスマートに成し遂げている印象だ。

高草木陽介さんの印象

その高草木陽介さんが記事で次のように書かれている。

2024年8月にKindle作家デビューを果たし、そろそろ半年です。収益は雀の涙ですが、今年に入ってからようやく月1万円を超えてきました。

「Kindle出版の収入を増やすためにページ数を水増しするのか。」より

さらりと書かれているが、月1万円とは驚きだ。仮に印税500円で計算したら、10,000円÷500円=20冊分の売上となる。自分もKindle出版をした経験があるので、これがどれだけ凄いことかよくわかる。

しかし、生活費とするには全く売り上げが足りない。

仮にKindle出版だけで生活することを考えた場合、500円の印税で年間10,000冊売って500円×10,000冊=500万円なので、年間10,000冊は売る必要があるだろう。

Kindle出版においても有料記事と同様に、それだけで生活するのは一般人にはとても無理そうだ。

有料記事が売れない理由

ここまで二つの記事を引用して、有料記事Kindle出版の収入のみで生活費を賄うのはとても難しそうだという事実を見てきた。

残念ながら、有料記事は期待するほどには売れないのが実態のようだ。

この記事では、有料記事はなぜ売れないのか?その理由について考えてみたい。

※記事を引用させていただいたクリエイターのお二人は、有料記事Kindle出版が売れなくても全く支障のない方たちだ。収益の入り口(名刺代わり)や純粋に楽しみとして捉えられているようだ。

1. クオリティが不足している

有料記事が売れる条件としては、一定のクオリティが確保されている必要があるだろう。

これは何も唯一無二の価値を提供せよと言っている訳ではない。そもそも人間の創作する物に唯一無二の価値など滅多に存在しない。たいていの創作物は既存の情報に何か一つ新たな視点を付け加えたり、既存の情報を組み合わせて新たな価値を見出したりした物が大半だ。

それでも有料記事を購入する人は、小さくてもいいから何某かの価値を期待して購入するのだと思う。記事も売り物である以上は、一定水準の価値を提供ができていなければならないのは当然の話だ。

誤字脱字が目立つ文章や、説明が下手過ぎて何を言いたいんだかわからない文章、どこにでも転がっていそうな情報を並べ立てただけの文章では問題外なのだ。

それでは、一定のクオリティを確保さえしていれば有料記事は売れるのだろうか?自分は記事のクオリティは必要条件ではあるが、充分条件ではないと思っている。

つまり、クオリティを確保しただけでは記事は売れないのだ。

2. 過当競争である

一定のクオリティを確保しても、必ずしも記事が売れないのだとしたら、その阻害要因は何だろうか?

その大きな要因として、有料記事市場が過当競争に陥っている事情があると考えられる。

有料記事はとても特殊な商材だ。

そもそも、日本の識字率はほぼ100%とされており、得意・不得手はあるにせよ、理屈上は日本人なら誰でも有料記事を書けてしまう現実がある。

書けるからと言って誰もが有料記事の売り手になるわけではないが、例えばnoteで実際に活動しているユニーククリエイターの数は100万人を超えているそうだ。仮にそのうち10%のクリエイターが有料記事を販売していると仮定すると10万人となり、相当な過当競争状態であることは間違いない。

参入障壁が低いが故にライバルはたくさんいるのだ。

そもそも経済学では、需要と供給のバランスで物の価格が決定されるという大原則がある。すなわち、市場に一定の需要が存在した場合に、供給が多いほど価格は下がり、少ないほど価格は上がるのだ。

これはいくら売り手が「100時間かけて書いた記事です」とか「凄く役に立つ情報です」と訴えたところで関係がない。どれだけ手間暇をかけ、どれだけコストがかかったとしても市場で決まる価格には影響しないのだ。

有料記事は100円~500円程度で販売されていることが多い。(※100円未満では運営コストが回収できず設定不可)

しかし、有料記事市場は供給過多であることから、もしかしたら市場で決まる適正価格は1円にも満たないのかもしれない。

仮に適正価格が1円に満たない記事を500円で販売したらどうだろうか?…ちっとも売れないはずだ。

これは珈琲ショップで通常500円で売られている珈琲を50,000円で販売することに似ているかもしれない。いくら「バリスタが時間をかけて丹念に抽出しました」とか「いい珈琲豆使ってますよ」と訴えたところで50,000円の珈琲はそうそう売れないだろう。

もちろん適正価格より大幅に高い価格でも記事を買ってくれる人は一定数いるかもしれない。それはその人のファンであり応援したい人だ。しかし、それ以外の人にはさっぱり売れない。

売れない理由は、市場で決まる本来の価格より設定価格が高すぎるからだ。500円の珈琲を50,000円で売るのは、どう考えても無理筋なのだ。

結局のところ、みかんさんが記事で書いていたように、有料記事市場はレッドオーシャンであり、ここで闘うには何らかの差別化が必要になってくる。

差別化とは、何らかの価値を付与してその他大勢の中での戦いを脱却し、商品の市場価格を上昇させる戦略を取ると言う意味だ。

3. 信用が足りていない

有料記事を売るには何らかの差別化が必須であるが、それは具体的には何を差すのだろうか?

有料記事の差別化のポイントは信用だと自分は思っている。それは有料記事の特性を考えたらよくわかる話だ。

有料記事の最大の特徴(欠点)は、購入するまで中身がわからない点にある。そのため、購入者は事前に品質・価値を確かめることができずに購入しなけれればならないのだ。

これは例えば洋服を買う時と比較すればわかりやすい。

洋服の場合は、購入前に実店舗にて品質・価値を確認可能であり、他の商品との比較や、価格とにらめっこして買う価値があるか事前に判断できる

洋服:
デザインや色味、生地の触り心地、縫製の状態などを確認可能。さらに試着によりサイズ感や自分に似合うかなど、購入前に品質・価値を確認可能

洋服の購入

それに対して、有料記事の場合は、購入前に品質・価値を確認することが不可能であり、他の有料記事との比較や、価格とにらめっこして買う価値があるか事前に判断することもできない

有料記事:
記事内容の有用性を確認することは不可能。また記事が自分に取って役に立つ内容なのかなど、購入前に品質・価値を確認することは不可能

有料記事の購入

有料記事の場合に、購入者が事前に品質・価値を確かめることができないのは、情報の内容そのものに価値があるからに他ならない。

事前に内容を知ってしまえば、記事が無価値化してしまうから事前開示ができないのだ。

内容を知らないまま購入しなければならない。よく考えたら有料記事はとんでもない性質の商品なのかもしれない(情報商材すべてに当てはまることだが…)。

もっとも、有料記事でもそれを補うために冒頭部分をチラ見せすることはあるようだ。

「ちょっとだけよ」「あんたも好きねぇ」(by加トちゃん)

しかし、肝心な部分は隠したままだ。
お金を払うまでは、ご本尊のご開帳はお預けなのだ(笑)。

#なんのはなしですか

チラ見せがあったとしても内容を知らないまま購入する構図に変化はないのだ。

だとしたら、有料記事は何をもって差別化するのかという疑問が湧いてくる。

けっきょくのところ、有料記事は洋服などと違い事前に品質・価値を確かめることができないので、差別化の根拠は記事を書いている人の信用に求めるしかあり得ないことになる。

「内容は事前に確かめようがないけど、この人の書いた記事なら多分役に立つはず。今までもハズレが少なかったし…」

と考えて、人は信用にもとづき有料記事を購入するのだ。

過当競争の中で記事が売れていない理由は、信用が不足していて差別化できていないからだ。

信用を身に付けるには

では、その信用はどうすれば身に付けられるのだろうか?

信用は通常、実績によって培われるものだ。しかし、その実績は信用がなければ築かれない。しかし、これでは「卵が先か?ニワトリが先か?」という循環論法に陥り永久に結果は得られない。

この永久ループから抜け出すには、やはり有名になるしかないだろう。顔を売るのだ。

まず書き手がどのような人かわからないことには始まらないので、実名かどうかは別として顔出しでの活動は必須だ。何か権威付けできる肩書もあった方がよい。

顔を売るのに手っ取り早い方法はマスコミへの露出だ。何だかんだ言ってもネットよりもTVや店頭で売られている雑誌などオールドメディアと呼ばれているメディアへの信認はまだまだ厚い(と信じている人は多い)のだ。

戦略としては、大手マスメディアに取り上げてもらいやすいように、記事の構成や発信を工夫することが考えられる。情報を拡散するためにフォロワーを増やす活動も必要だ。

一度実績をつくれば、それが信用を高めさらに実績に繋がるという好循環が始まるかもしれない。

「信頼と実績」は昔から商売の基本だ。

さいごに

以上、この記事では「有料記事はなぜ売れないか?」について考察してみた。

有料記事を売るためには、まず記事のクオリティを確保した上で、戦略的にマスコミへの露出を増やし顔を売る必要がありそうだ。信用を身に付けることでレッドオーシャンから抜け出すのだ。

しかし、ここに書いてあることを全て実践したからと言って必ずしも有料記事が売れるようになるとは限らない。

成功するかどうかは時の運にもよる。

それに何よりも、この記事を書いている筆者は、Kindle本の出版実績はあるが、まだ一度も有料記事を書いた実績がない人間なのだ。このような人間の言うことを聞いているようでは商売は覚束ない。

何事も自分の頭で考えて進むことが大事だ。

自分の有料記事へのスタンスとしては、趣味として今後始める可能性までは否定しないが、生活をかけて取り組むつもりは全くない。

それはこの記事に書いた通り、とてつもなく大変そうな予感しかしないことと、自分のnote世界が変質してしまうことを恐れているからだ。

有料記事を売るには、そちらの方向へ全振りしなければ成功は覚束ないと思うが、その場合note記事を書くことが自体が楽しくなくなってしまうだろう。

それは自分に取っては、まったくの本末転倒である。

「文章を書くことが楽しいことと、それでお金を稼ぐことはまったくの別物である」

ありきたりであるが、これが自分にとっての結論だ。


みかんさん高草木陽介さん、記事を引用させていただきありがとうございました。

※有料記事を書くことを否定する意図はありません。

※この記事は、個人の見解を述べたものであり、法律的なアドバイスではありません。関連する制度等は変わる可能性があります。法的な解釈や制度の詳細に関しては、必ずご自身で所管官庁、役所、関係機関もしくは弁護士、税理士などをはじめとする専門職にご確認ください。
また本記事は、特定の商品、サービス、手法を推奨しているわけではありません。特定の個人、団体を誹謗中傷する意図もありません。
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