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【音楽】「ビルボードクラシックスフェスティバル」本物の歌唱力に魅せられた夜
「Daiwa House presents billboard classics festival 2025」に参加した。
※ネタバレにご注意ください! #ネタバレ
ビルボードクラシックスフェスティバルとは
「Daiwa House presents billboard classics festival」は、オーケストラの豊かな音響とボーカリストの研ぎ澄まされた歌声が協演するコンサートで、今年で10年目を迎えるそうだ。
オーケストラの演奏をバックに歌うシンフォニックコンサートである。
東京と兵庫の2か所で開催されたが、自分が参加した東京公演では、大竹しのぶ、小柳ゆき、サンプラザ中野くん、松崎しげる、未唯mieの5名がボーカリストとして出演した。
指揮は齋藤友香理、オーケストラは東京交響楽団の演奏だ。会場は錦糸町駅から徒歩5分のすみだトリフォニーホールであった。今回は使用しなかったがパイプオルガンを備えた本格的な音楽ホールだ。
複数のアーティストが参加し、しかも各楽曲が豪華なフルオーケストラの演奏で聴けるため、お得感が半端ないコンサートとなっている。
出演者も何度か感謝を述べていたが、こんな豪華なコンサートが実現できるのもスポンサーであるダイワハウスのお陰であることは間違いない。
会場費用や警備・案内係の人件費、オーケストラの出演料、主催者の取り分などを考えたら後には何も残らないだろう。おそらく5人の出演料相当分くらいをダイワハウスが持っているのではないだろうか?
もちろんダイワハウスには企業イメージをアップすることで業績向上に繋げたいという広い意味での営利目的はあるのだろう。しかし、純粋な営利目的から少し外れたところでこのような芸術文化活動を支援する活動に力を入れている企業はたいへんにありがたい存在である。
セットリストは次のとおりだった。(東京公演の場合)
「Runner」 サンプラザ中野くん
「be alive」 小柳ゆき
「あなたと生きたい」 大竹しのぶ
「ただそれだけ」 松崎しげる
「ペッパー警部」 未唯mie
「廻廻奇譚」 小柳ゆき
「あなたのキスを数えましょう」 小柳ゆき
「大きな玉ねぎの下で」 サンプラザ中野くん
「旅人よ~The Longest Journey~」 サンプラザ中野くん
= 休憩 =
「Hallelujah」 未唯mie
「ピンク・レディー・メドレー」 未唯mie
「一本の鉛筆」 大竹しのぶ
「愛の賛歌」 大竹しのぶ
「もしもピアノが弾けたなら」 松崎しげる
「愛のメモリー」 松崎しげる
「見上げてごらん夜の星を」 スペシャルコラボ
コンサート感想
会場
すみだトリフォニーホールは初めて訪れたが、クラシックコンサートに最適な設計をされた音響に優れたホールである。約1800人収容できる。
今回は前から4列目の席で、舞台の低さもあって本当に手に届く所にアーティストがいた。その笑顔や緊張感がそのままダイレクトに伝わってきた。スピーカーのカバー領域よりも前の座席であったため、肉声がそのまま届いていたと思う。
まるでプライベートコンサートを楽しんでいるかのような臨場感であった。
会場の外から見える夜空のスカイツリーの姿も凛として美しい。
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オーケストラ
東京交響楽団とバックコーラスを担当したソウルバードクワイアの面々が総勢71名もいて、舞台上に所狭しと並んでいた。今までに経験した歌手とオーケストラが協演するシンフォニックコンサートで、ここまで大規模な陣容は観たことがない。まったくもって贅沢な構成だ。
そしてそれを率いるのが、指揮者・齋藤友香里だ。女性の指揮者は珍しいと思うが、ダイナミックなアクションで交響楽団を縦横無尽に操る細身の後ろ姿が何ともカッコイイのだ。
最近は指揮者のことをマエストロと呼ぶようだが、惚れてまうほど躍動感のあるマエストロであった。
女性の場合はマエストラが正式かもしれないが、松崎しげるがマエストロと紹介していたので、この記事ではマエストロで通す。
セットリスト
会場で配布されたパンフレットにはセットリストが記載されていたが、同時に曲順を修正したお知らせの紙が同封されていた。
構成は、前半では導入として各アーティストが1曲ずつ歌い、後半ではそれぞれのコーナーで2曲ずつ披露する形式であった。その曲順に若干の修正があったようなのだ。
修正後の曲順では、前半の締めを未唯mie「ペッパー警部」が、後半の締めを松崎しげる「愛のメモリー」が担当している。前半・後半のそれぞれの締めを勢いのある曲に変更することで、全体の構成が引き締まる効果があった。
なるほどなと思わせるセットリストの変更であった。
サンプラザ中野くん
出だしはいきなりの「Runner」だ。これは勿体なさすぎる気がした。もっと会場が温まってから聴きたかったというのが本音ではある。
しかし、この曲で一気に会場が盛り上がったのは間違いない。これも構成の妙である。
かげりのない少年の
季節はすぎさってく
風はいつも強く吹いている
走る走る 俺たち
流れる汗もそのままに
いつかたどり着いたら
君にうちあけられるだろ
若い頃はよくカラオケで、拳を突き上げながら皆で歌った定番ソングであった。
「走るー!走るー! オレーたーちー!」
「流れーる アセも そのまーまーに!」
いつの時代も若者は「抱えきれぬ思いを胸に」運命に立ち向かっているのだろう。そして鬱屈した思いを何かにぶつけたくなるのだろう。「Runner」は、そんな若者たちの思いを代弁した曲であった。
マイクを片手に拳を突き上げて歌う同期のM君の姿が懐かしく思い出される。
「大きな玉ねぎの下で」の玉ねぎは言わずもがな武道館の屋根をイメージしており、ペンフレンドと会えなかった切ないエピソードを切々と歌い上げた名曲だ。
先日別のコンサートでもこの曲を聴いたが、何度聞いてもいい曲だ。現在、同名の映画が公開されているそうだが、きっと曲の内容にオマージュを受けた作品なのだろう。
「旅人よ~The Longest Journey~」は、日本テレビ「進め!電波少年」の番組内企画「猿岩石ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」の応援歌として制作された曲だ。
もうかれこれ30年近く前の話でとても懐かしい。いい曲なのだが、有吉が歌うにしては難しすぎたようだ笑。
サンプラザ中野くんの歌い方は、いつも全力だ。喉がつぶれてしまわないかとこちらが心配になってしまうほどだ。しかし、それが彼の持ち味であり歌の伝え方なのだろう。
コンサートでは、汗がほとばしるほどの歌唱に力を貰った。
今まではっきりと意識したことはなかったが、自分は爆風スランプ(サンプラザ中野が所属していたバンド)のファンだったのかもしれない。
間近に見たサンプラザ中野くんからは、サングラスの奥に隠されたシャイな一面と痩せた体に秘められた熱い情熱が感じられた。
小柳ゆき
ベテラン勢が多い中、唯一若手の女性アーティストとして参加したのが小柳ゆきだ。
「be alive」や「廻廻奇譚」も勿論よかったが、やはり「あなたのキスを数えましょう」が一番聴きごたえがあった。
あなたのキスを数えましょう
ひとつひとつを想い出せば
誰よりそばにいたかった
Without you but you were mine
小柳ゆきは、可憐な立ち姿からは想像できないような声を出す歌い手だ。腰を折って前かがみになりながら腹の底から絞り出すように歌う姿に、感情が揺り動かされる。自然と瞳に涙が浮かんできた。
やはり彼女にとって、この曲は特別な宝物なのだろう。
小柳ゆきの「あなたのキスを数えましょう」。これぞプロの歌唱だ。生歌で聴いてみることをお勧めしたい。
未唯mie
ピンク・レディーは、言うまでもなく一世を風靡したミーとケイの二人組の女性デュオだ。当時、ポップな音楽とちょっとセクシーな衣装に激しい踊りと抜群の歌唱力で爆発的な人気を誇っていた。
親世代からは「まあ!下着みたいな格好して…」との批判もなかったわけではないが、ピンク・レディーが社会現象になっていたのは疑いのない事実だ。
小学生だった妻も義妹と二人で必死にテレビで振付を覚えて踊っていたそうだ笑。
そう言えば、その頃好きだったクラスの女の子が「どことなくミーちゃんに似ているのでは?」と密かに思っていたことを思い出した。
女性の顔タイプとして、面長の美人系と丸顔のカワイイ系という分類が知られている(自分調べ)。キツネ顔とタヌキ顔と言い換えてもいいかもしれない(これも自分調べ)。
子供の頃好きになった女の子はたいていミーちゃんのように面長の女の子だった。多分美人系だ。大人になってから、丸顔の女の子の方が話をしていても緊張せずに素の自分でいられることに気がついた。
自分の本当の好みの顔タイプは、丸顔のカワイイ系であったのだ。
そう思って今部屋を見回してみるとタヌキ顔の女性が座っている。30年以上連れ添った実績からして、正解のくじを引いたようだ。
それはともかくとして、ミーちゃんは大人になって妖艶さを増していた。過激な衣装や激しい振付はないが、歌唱力は健在である。年齢と伴にキーは下がってきているが、歌唱技術でカバーできておりまったく違和感を感じさせないパフォーマンスであった。
たいへんな努力を続けて来られたのだと思う。
「ペッパー警部」、そして「ピンク・レディー・メドレー」を生で聴けたのは最高の時間であった。
何しろ目の前にあのミーちゃんが存在しているのだ。
信じられないことばかりあるの
もしかしたらもしかしたら そうなのかしら
それでもいいわ 近頃少し
地球の男に あきたところよ
「ユーフォー!」 …幸せをありがとう!
大竹しのぶ
大竹しのぶは歌手ではないので、正直「オーケストラバックにしてちゃんと歌えるのかな?」と心配していた。
しかし、それは全くの杞憂であった。
彼女は歌手ではないが役者なのだ。それも憑依型と称される天才型の役者だ。今回は大物歌手に憑依して歌い切ってくれた。
なんと「一本の鉛筆」を歌い終わった頃には、既に涙を流していたのだ。1800人の聴衆を前にして、歌に感情移入して泣ける女優はそう多くは存在しないだろう。
涙を流しながら歌った「愛の賛歌」は、まるで美空ひばりが歌っているかのように感じられ鳥肌が立った。
たとえ空が落ちて 大地が崩れても
怖くはないのよ あなたがいれば
あなたの熱い手が 私に触れるとき
愛の喜びに 私は震えるの
少し野太い歌声は、声の伸びこそやや不足していたが、本物の歌手の歌声だった。
大竹しのぶは天才女優である。その歌声に魂が震えた…。
松崎しげる
松崎しげると故・西田敏行が盟友であったとは知らなかった。「もしもピアノが弾けたなら」は、昨年10月逝去した盟友に捧げる歌だった。
しかし、圧巻は大トリの「愛のメモリー」である。
前列の客席に座る(恐らく)女性客の方向に左手を差し向けて目線をロックオンしながら歌うのは、ザ・大物歌手の貫禄だ。
ロックオンされた女性は、たぶん一生ついていくことだろう笑。
美しい人生よ かぎりない喜びよ
この胸のときめきをあなたに
この世に大切なのは
愛し合うことだけと
あなたはおしえてくれる
歌唱としては、とにかく歌のタメが凄いのだ。
それはまるで「俺のタイミングで歌ってやる!」というマエストロへの挑戦状にも感じられた。それを受けて立つマエストロも、後ろを振り向きながら必死にタイミングを合わせに行く。
「歌はその場限りの魂のぶつかり合いだ!」と言わんばかりのセッションは見ものであった。
松崎しげるからタイミングを合わせにいっていた場面もあったので、けっして単なる暴走ではない。
普段オーケストラの指揮でこんな経験はないはずなのに、しっかりと対応していたマエストロ・齋藤友香里の力量も大したものだと感じた。
凄い掛け合いを見せてもらった。
エンディング
最後は全員で「見上げてごらん夜の星を」を歌ってエンディングであった。
全員で歌うため仕方ない部分はあるが、サンプラザ中野くんのキーが合ってなくて少し苦しげなのが唯一気の毒であった。
見上げてごらん夜の星を
小さな星の 小さな光が
ささやかな幸せをうたってる
見上げてごらん夜の星を
ボクらのように名もない星が
ささやかな幸せを祈ってる
この歌が作られたのは1963年で60年以上前のことだ。そして歌手・坂本九の命が御巣鷹山に散ったあの日からもう40年も時が経過してしまった。
「見上げてごらん夜の星を」は、戦後の復興と高度経済成長期という時代を背景に生まれた曲とのことだが、時代を超えて妙に訴えてくるものがある。
昔の歌は今の歌に比べて素朴で技巧も少ないかもしれないが、不思議といつまでも消えることのないエネルギーを秘めている。
この歌もきっとずっと歌い継がれてゆくことだろう。
◇
こうして夢のような時間は過ぎて行った。
今回のコンサートはアーティストを間近で見れたお陰もあり、それぞれのアーティストの本物の歌唱力を堪能できたことが大きな収穫であった。
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