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【花粉症】病気なのか?公害なのか?


今年もアノ季節がやってきた

クシュンッ!…くしゃみが止まらない。
今年もアノ季節がやってきたようだ…。

早ければ今くらいの時期からゴールデンウィーク前頃まで吹き荒れる花粉症のシーズン到来だ!(全然うれしくない…)

自分の場合、アレルゲンテストではスギ花粉ヒノキ花粉の両方に対する抗体があるようで、前半のスギ花粉飛散期から後半のヒノキ花粉飛散期まで、けっこう長い期間アレルギー反応に悩まされている。

症状としては、昼は鼻水が止まらず、夜は逆に鼻づまりで息が苦しくどうにもならない。昔花粉の多い地域に住んでいた時には、目が痒すぎて「目ん玉取り出してゴシゴシ水道で洗いたい!」と本気で思っていたほどだ笑。

最近は薬の改良で症状がだいぶマシになってきたが、悩ましい季節であることに変わりはない。

もっとも、自分の症状が改善してきたのは薬のお陰ではなく「歳とって体の反応が鈍くなったんじゃないの?」という妻の辛辣なごもっともな意見もあり、真相はいまだ謎のままだ。


花粉症は国民病

ところで自分と同じようにスギ花粉に悩まされている人はどのくらいいるのだろうか?

東京都の調査によると、東京都内におけるスギ花粉症推定有病率は48.8%である。驚くべきことに、都民の2人に1人がスギ花粉症に罹患しているという調査結果なのだ。

しかもグラフを見ると、調査を重ねるごとに有病率が増加しているように見える。

花粉症患者実態調査報告書, 東京都福祉保健局, 2017.12

むろん花粉症に罹患しているからと言って、そのすべての患者に症状が現れるわけではない。

花粉症患者実態調査報告書, 東京都福祉保健局, 2017.12

無症状の患者が4割近く存在することから計算すると、花粉症と自覚している患者の割合は都民全体の30%程度という結果になる。

これは肌感覚とも合っていそうな数値だ。

48.8%× (100%-37.7%) =30.4%

花粉症発症率

しかし、10人中3人が花粉症を発症している現実を改めて突き付けられると、その多さに驚くと同時に社会経済に与える影響も甚大であろうと心配になる。

今や花粉症は国民病と言っても過言ではない病気なのだ。


発症メカニズム

では花粉症はどのようなメカニズムで発症するのだろうか?

厚生労働省の資料には以下のように記載されている。

“花粉は異物だぞ!”という情報が細胞へ送られてその花粉だけに反応する抗体が症状を起こすのです。

花粉症の原因, 厚生労働省
花粉症の原因, 厚生労働省

要するに花粉が原因物質(抗原)なのだ。

1. 花粉(抗原)が体内に取り込まれる
2. 免疫系が働き抗体が作られる
3. 花粉(抗原)が抗体と結合することでヒスタミンを放出
4. ヒスタミンがくしゃみなどの症状を引き起こす

花粉症のメカニズム

異物としての花粉(抗原)が体内に入ってきたときに、我々の免疫系が作動して花粉を封じ込めるための抗体を生成するのは、正常な生体反応であると思われる。むしろこれが有効に働かなければ他の抗原(細菌やウィルス)などに対する抵抗力も無くなってしまうだろう。

何が問題かと言うと、体内に入って来る花粉(抗原)の量が多すぎるのが問題なのだ。

花粉症患者は薬の服用により炎症を抑えたり、ヒスタミンの放出を抑えたりしているが、それらは対症療法に過ぎない。

本質的には花粉(抗原)の量が多すぎるのが問題であり、この原因物質=花粉を減らさない限りは根本治療には至らないのだ。


花粉症の薬

現在では様々な花粉症薬が登場しているが、30年ほど前に市販されていた薬は喉の渇きと眠気が酷かった。

若い頃は自分の出番がない刺激のない社内会議では、仕事中にも関わらず何度も寝そうになったことがある。運転などはもっての外だった。

その後、眠気の出にくい薬も発売されるようになってきたが、薬を飲んでいる季節はボーっとしていて、意識レベルが常に70%くらいの状態であった。大事な決断は花粉症の季節にはおこなわないほうがいいというのは、長年の経験から習得した生活の知恵である。

花粉症薬にはさまざまな種類があるが、総じて薬による眠気と効き目はトレードオフの関係にあり、効き目が強い薬は眠くなり逆に効き目が弱い薬は眠くならない傾向となっている。

しかし同じ薬でも体質により作用は微妙に異なるようであり、花粉症薬に関してはいろいろ試して自分の体質に合った薬を選ぶのが大事だ。

花粉症の薬で眠くなる, 辻堂たいへいだい耳鼻咽喉科

上記コラムでは、眠気の少ない薬として以下があげられている。

この中で眠気が出にくい薬はビラノア、デザレックス、アレグラ、クラリチンです。

花粉症の薬で眠くなる, 辻堂たいへいだい耳鼻咽喉科

自分の場合は、近年は花粉症の症状改善も考慮してデザレックスを処方してもらっている。花粉の量が特別に多い日には症状が若干出るが、全く眠くならずに済んでいる。1日1回の服用であるのも助かっている。


経済への影響

花粉の飛散量が経済に及ぼす影響に関する研究もある。

第一生命経済研究所のレポートでは下記のような結論が導かれている。

過去のデータから、7-9月の平均気温が+1℃上昇すると翌1-3月の家計消費支出が▲0.5%減少する関係があり、花粉の飛散量と春先の個人消費には関係があることが窺える。

花粉の大量飛散が日本経済に及ぼす影響, 永濱 利廣, 第一生命経済研究所, 2023.02.20 

気温との相関を見ているのは、前年夏の気温が高いと翌シーズンの花粉飛散量が増加するためである。

2023年の予測では、以下のようになっている。

1-3月の個人消費を▲0.7%(▲3,831億円)程度押し下げる可能性がある。同時期の実質GDPは同▲0.2%(▲3,272億円)程度減少する計算になる

花粉の大量飛散が日本経済に及ぼす影響, 永濱 利廣, 第一生命経済研究所, 2023.02.20 

花粉大量飛散による経済への影響は無視できないのだ。

なお、上記予測はあくまでも平年に対する増減を表しており、平年での元々の損失は含まれていないことに注意が必要だ。花粉症による経済への影響の全体像としては、さらに規模が大きいと考えられる。


花粉症は公害なのか?

ここまで花粉症についてみてきたが、花粉症は果たして病気と言えるのだろうか?

花粉症アレルギーは、医療機関に罹り薬を飲んでいるという意味では病気の一種なのだろう。

しかし、コロナウィルスやインフルエンザウィルスの罹患や癌、脳卒中、心筋梗塞などの病気とは少し毛色が異なる気がしている。

そもそも花粉症は原因物質がはっきりしており(スギ花粉だ!)、現代日本のようにスギ花粉の大量飛散がなければ発症することがない病気なのだ。

花粉症は、インフルエンザウィルスのように自然界に存在するウィルスによる疾患ではなく、癌のようにDNA異常による病気でもなく、脳卒中、心筋梗塞など生活習慣や老化に起因した病気でもない。

人工的に植林し大量に増やしたスギ林が原因なのだ。

スギは自然界に存在する植物ではあるが、ここまで人工的に増やしてしまったのは人間の手による作為だ。そして林業のコストが合わなくなって、それを伐採することなく長年放置してきたのは人間の不作為でもある。

花粉症は病気なのか?
本当は公害ではないのか?

そんな疑問が長年頭の中をグルグル渦巻いていた…。

公害なら原因を早く取り除いて欲しい!

特に花粉で悩まされてイライラした季節には「あのスギ林の山、山ごと■■してやろうか!」(■は自粛…)と、メラメラ怨念おんねんを燃やしていたものだ。

研究者の中にもそのような主張をする方がいるようだ。

花粉症は、世の中に重大な被害をもたらしている「公害」である。だが、政府はその対策を怠ってきた。政府は責任を持って発生源であるスギの人工林を速やかに伐採すべきだ。

花粉には強力な「公害対策」が必要だ, 堅田 元喜, キヤノングローバル戦略研究所, 2019.12.6

まったく同感である。

国は手をこまねいて何もしていないというわけではないようだが、何しろ進みが遅い。遅すぎる。亀のようなあゆみだ…。

花粉発生源対策, 林野庁HP

花粉症発生源対策は、花粉症による経済損失を考えたらコスパは抜群にいいはずだ。

経済対策にもなるのだから、補助金をばらまく政策はやめて、花粉症対策を最優先に取り組んで欲しい物だ。


※花粉症薬の服用に関しては、必ず医師と指導のもとおこなってください。
※この記事は、個人の見解を述べたものであり、法律的なアドバイスではありません。関連する制度等は変わる可能性があります。法的な解釈や制度の詳細に関しては、必ずご自身で所管官庁、役所、関係機関もしくは弁護士、税理士などをはじめとする専門職にご確認ください。
また本記事は、特定の商品、サービス、手法を推奨しているわけではありません。特定の個人、団体を誹謗中傷する意図もありません。
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