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【不倫】政治家に倫理観は不要ですか?

※この記事には政治的な主張が含まれています。苦手な方は読み飛ばしてください。


不倫疑惑の発覚

不倫は許されるのだろうか?

こんなテーマを掲げると、なにか疚しいことがあるのではないか?と疑う向きもあるかもしれないが、自分にはそのようなことは断じてない…笑。この場ではそういうことにしておいて欲しい汗

そんな些末なことは脇に置いておくとして、きっかけは例の件である。

国民民主党玉木代表不倫疑惑が報じられたのだ。

玉木氏と言えば、先の総選挙で衆議院のキャスティングボートを握った国民民主党の代表であり、給与所得の103万円の壁を打ち破る救世主と目されている人物だ。

何とか国民民主党を与党陣営に引き入れて政権を安定させたい石破政権を、予算を人質に取って翻弄しながらも政策実現を目指すその姿は、さながら政界のニューヒーロー誕生と言えるかもしれない。

玉木氏がニュースに登場しない日はない。一挙手一投足が一番注目される政界のキーマンとなったのだ。

その玉木氏に突如女性スキャンダルが持ち上がった。しかも、重要な政治日程である首班指名選挙の当日にだ。

ニュースで見たときには、「えー!何やってんだよ!!玉木さん」と叫んでしまった。

本当に「何やってくれてんだよ!」である。

フードを被った変装姿が、妙に間抜けヅラに見えてきてしまう…

報道の影響を最小限に食い止めようと考えたのだろう。玉木氏の初動は迅速だった(報道されることは週刊誌からの取材で、前週末に知ったらしい)。

首班指名選挙の当日11月11日朝9:30から衆議院会館で謝罪会見を開き、「報道された内容はおおむね事実。家族のみならず期待を寄せていただいた全国の皆様に心からおわびを申し上げる」と率直に謝罪した。

その前後、与党の公明党・新代表自民党の石破総裁と相次いで党首会談をこない、103万円の壁を含む経済政策の協議を三党で進めることを確認している。

昼前には国民民主党の議員会合を開き、玉木氏の代表継続と首班指名選挙玉木氏の名前を書くことを改めて確認して、午後の首班指名選挙に臨んでいる。

まさに、電光石火の早業であった。

記者会見で(おそらく謝罪会見アドバイザーが書いただろう)カンニングペーパーが見えてしまったのはご愛嬌だ。時間的な制約で、代表に留まったまま首班指名選挙に臨んだのも理解できる。

しかし、今回の女性スキャンダルをこれで幕引きとしてしまってよいのだろうか?

ネット界隈では熱狂的な支持者による「不倫の責任を取って、労働者の手取りを増やしてください!」という謎理論による援護射撃もあり、火消はひとまず成功したかのようにも見える。

そもそも国民民主党は今回の選挙で急成長した玉木氏の個人商店のような組織だから、交代しようにも代わりの顔になるタレントが見つからない。

だからといって、このまま押し通すつもりなのだろうか?

国民民主党は、今回の選挙で玉木氏の甘いルックスと明快な主張をSNSを最大限利用して拡散する戦略で、急速に票を伸ばしたことは紛れもない事実である。

しかし、大衆は意外と賢いのでそれだけではついてこない。その裏に高い倫理観に支えらえた信頼があったからこそ、多くの支持を集めたのだと自分は分析している。

自民党のように私利私欲に走るのではなく、国家・国民のために何ができるか考えて政策を訴える真摯な姿勢が評価されたのだ。

国民民主党「国民」は、そのような思いを込めて名付けたのではないのか?

国民民主党労働者の手取りを増やす政策は、財源の裏付けがないままの提案となっているため、個人的には諸手を挙げての賛成はできない。

しかし、玉木氏国家・国民のために何ができるか考えて政策を訴える真摯な姿勢は応援したい気持ちがある。もしかしたら、日本の政治を変えてくれるかもしれない期待もあった。

だからこそ心配している。

国民の信頼を裏切ってしまったにも関わらず、代表も辞任せず、議員も辞任しない。

本当にこの対応でいいのだろうか?
何よりも、玉木氏自身が納得できているのだろうか?


陰謀論について

今回の女性スキャンダルが報じられたのが、首班指名選挙の当日という絶妙なタイミングであったことから、ネット界隈では陰謀論が渦巻いている。

その主旨は、「減税を許容できない某団体が、ハニートラップ玉木氏をはめた」というものだ。

もちろんこれには何の根拠もない。

週刊誌の記事によれば、お相手の女性は地元高松市の観光大使であり、地元では以前から密会の噂が流れていたということなので、玉木氏が時の人となり情報価値が高まった今のタイミングで取材して記事にした、と理解するのが自然な流れだ。

玉木氏が注目を集める事をよしとしない人物が、週刊誌に情報をタレ込んだ可能性は否定できないが…陰謀論とは少し違う気がする。

ハニートラップはスパイ映画によく出てくるが、女の工作員が色気を使ってターゲットに近づき国家機密を聞き出したり、不貞関係をネタに脅して意のままに操ったりする行為だ。

ハニートラップは現実の世界にも存在し、過去には、在上海日本総領事館の男性職員が、中国から情報提供を強要されたとの遺書を残して自殺した痛ましい例もある。

しかし、今回の場合は相手の身元もわかっており、明らかにハニートラップとは異なる事例だ。

単に、玉木氏の脇の甘さが招いた事態であると考えられる。

陰謀論を語る人は、立証責任は語る側にあることを再認識した上で、論拠を示して発言して欲しいものだ。

なお、皮肉なことに、国民民主党ハニートラップにより日本の政治が左右されるリスクを懸念し、大臣などを任命するときの適性審査に、ハニートラップの有無を含めた性的行動のチェックを加えるべきだと主張している。

一つはいわゆる適性評価の調査事項の中に、海外では認められている「性的行動」、sexual behaviorと英語では言いますけれども、この性的行動の節度に関する事項が入っておりませんのでこれを追加するということ。いわゆるハニートラップなどにかかっていないかどうかのチェックは必要だと思います。

国民民主党 代表定例会見(2024年4月2日)冒頭発言概要, 2024.4.2

玉木氏は、自分が大臣になって身辺調査される可能性を全く想定していなかったのだろうか?なんとも解せないところである。


不倫の代償について

不倫の代償は、どのようなものが考えられるだろうか?

不倫とは、一般的には婚姻関係にある一方の配偶者が、他の人と恋愛関係や性的関係を持つことを指します。

もし夫が浮気したら、妻にこっぴどく怒られる。これだけは間違いない。場合によっては離婚を言い渡されてしまうかもしれない。

玉木家が今どのような状態にあるのか、たいへんに気がかりである。

不倫した場合の刑罰を、刑事と民事に分けてみてみよう。

戦前には姦通罪という犯罪が存在し、妻が他の男性と肉体関係をもった場合には相手と共に刑事罰が与えられた。一方で夫が他の女性と同じことをしても不問であった。

これは戦前の家制度を守るしくみであり、男女不平等の法律であったため戦後に家制度の崩壊とともに廃止された。

したがって、現在の法では不倫しても刑事罰はない。不倫しても前科がつくことはないのだ。

だからと言って不倫はいくらやっても問題ないかと言えば、そうとも言い切れない。

不倫不法行為として扱われ、民事上の賠償責任は生じるのだ。故意の場合はもちろんのこと、過失であっても慰謝料が認められる場合がある。

今回の場合は、(実際にするかは別として)玉木氏の妻が玉木氏及び相手の女性に慰謝料を請求できる。

相手の女性が玉木氏が婚姻していたことを知らなかった場合は過失に相当するが、有名人の玉木氏の婚姻有無は容易に知ることができる事実であり、仮に慰謝料を請求されたら支払わなければならないだろう。

不倫の刑罰

不倫の法律上の位置づけは、例えば器物損壊罪と比較することで明らかとなるかもしない。

器物損壊罪とは、他人の所有する物を故意に破壊、損傷、または使用不能にする行為に対する刑事罰です。

器物損壊罪の刑事罰については、故意か過失かで大きく扱いが異なる。

故意の場合は、「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられるのに対して、過失の場合は刑事罰に問われることはない。

故意とは「わざとやった」場合であり犯意が認められるのに対して、過失とは「不注意でやった」場合であり犯意がない。

このように、器物損壊罪では犯意の有無で刑事罰の有無が決まるのだ。

民事上の賠償責任は当然、過失であったとしても負うことになる。

器物損壊罪

このような比較が適切かどうかは法律の専門家ではないのでわからないが、刑事罰と賠償責任の観点で比較する限り以下のことが言えそうだ。

不倫行為 = 過失による器物損壊行為

不倫行為は、法的には「過失による器物損壊行為」すなわち、「不注意で他人の物を壊してしまった行為」と同じ扱いなのだ。

その意味では、不倫は当事者間の問題であり周りがとやかく言う問題ではない

しかし、実際には不倫行為はけっして過失によるものではなく、はっきり意思を伴った犯意故意によるものであるのは明らかだ。

故意に相手に損害を与えたのに罰せられない。そこに矛盾が生じている。

夫婦は社会を構成する基本的な要素であり、それを破壊する不倫行為には主婦層を中心に根強い反発がある。

例えば、これを自分の夫に置き換えてみて「男という生き物は多少の浮気はしょうがない」などと寛容になれる妻は少ないと思う。

大抵の妻は(心の中で)夫を半殺しにするのではないか?「泥棒ネコ!」というセリフもこのような時のためにある。

いわば法的な扱い社会的な感情が乖離しているのが不倫問題なのだ。

いずれにしても不倫行為は社会的な信頼を失墜してしまうことは間違いなく、半殺しの目に遭いたくなければ、政治家でなくともやらない方がいいに決まっている。


政治家の倫理観と信頼について

玉木氏は立派な志を持った政治家である。

それは、衆院選に初挑戦し落選中の18年前に書いたブログを読めばよくわかる。

「政党とは何か。」
同じ政治理念、政策を共有する集団ということでしょうが、私は、それ以前に、一定のクオリティ(品質)を満たした人の集団であるべきだと思います。
これは、弁護士や会計士などのように一定の資格試験をクリアーすることを条件にするというよりも、
「絶対に、不正をしない。」
「絶対に、不倫をしない。」
などというように、そもそも政治家として有権者信頼に耐えうる集団であることを、自信をもって約束できる集団であるべきだと思います。
何も聖人君子である必要はありませんが、より高い倫理観を持った人の集団であるべきだと思います。

たまき雄一郎ブログ, 政党の品質保証, 2006.10.7

今、有権者が求めているのは、社会保障制度の改革や財政改革などよりも、ひょっとすると、信頼できる政治家、政党の誕生なのかもしれません

たまき雄一郎ブログ, 政党の品質保証, 2006.10.7

玉木氏はこのブログ記事の中で、「政党とはより高い倫理観を持った人の集団であるべきだ」と語っている。

同じ主張でも、それを言った人が誰なのかによって受け取られ方は変わる。人は信頼できる人の言葉にしか耳を傾けないのだ。

玉木氏はそのことをよくわかっていたようだ。

今のように閉塞感に満ちた日本では、耳障りのいいことばかり言っていては国が立ち行かなくなる。時には厳しい政策提言も必要だ。そんな時に、信頼のおけない政治家の言葉を誰が聴くだろうか?

信頼は政治の基本なのだ。そして、その信頼は高い倫理観に支えられているのは間違いない。

間違いは誰にでもある。重要なのは、それに気づいた時の対応力だろう。55歳は政治家としてはまだ若い。再起も可能だと信じている。

かつてのブログ記事あなたの志を過去形にしないで欲しい。

今一度、玉木氏に問うてみたい。
「政治家に倫理観は不要ですか?」


※この記事の記載は個人の感想であり、法的な解釈が間違っている可能性も考えられます。個別の事案については必ず弁護士にご相談ください。

※この記事では「政治家の不倫」について考察していますが、記事内容はあくまでも筆者の個人的な見解です。
当該テーマについては、異なる見解が存在することが予想されますが、筆者の見解と同様に、それらの異なる見解も尊重されるべきだと考えています。
相手を罵ったり言論封殺しようとするのではなく、自分の見解とは異なった見解を相手が述べる権利を全力で守るのが真の民主主義だと信じています。

※この記事は、個人の見解を述べたものであり、法律的なアドバイスではありません。関連する制度等は変わる可能性があります。法的な解釈や制度の詳細に関しては、必ずご自身で所管官庁、役所、関係機関もしくは弁護士、税理士などをはじめとする専門職にご確認ください。
また本記事は、特定の商品、サービス、手法を推奨しているわけではありません。特定の個人、団体を誹謗中傷する意図もありません。
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