引き金

物語には無駄がない。

出てきた人物にはそれぞれの役割があり出てきた物にはそれぞれの思いが込められている。いわゆるチェーホフの銃なんて呼ぶらしいけれど発砲する事のない銃は舞台上に置いてはいけないのだ。

無駄は、無意味は、無価値は、決して許されない世界。

そんな冷たい世界を私たちは創り出していて、そこに登場人物達を閉じ込めている。監禁。だけれども役割を持って生まれた彼等は無価値な私達よりはずっとずっと、ずっと、幸せなのかもしれないや。

同情なんてものは余計なお世話?

私は許されたいから何かを書いていて、彼等に何かを託していた。

現実からの逃避。

行き着いた世界がそこだった。

床には一丁の銃。

使い方は分からない。

私は徐に銃を拾い上げた。

引き金に人差し指を置く。

狙いはただ一つ。

後は、引くだけ。

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