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地理と世界史の雑学

今回は受験指導から脱線した話題で記事を書きます。地理と世界史の雑学編として地政学リスクを扱います。ご存知のこととは思いますが、国際政治の専門家ではなく、政治的な思想家でもないことを、最初にお断りしておきます。

受験指導してきた経験から、高校地理や高校世界史の知識や含蓄をもとに、世界情勢を考えるとどう見えるかを考察します。しかし、その考察は受験指導とは直接関係ないこともお断りしておきます。

・なぜ親ロシア国家が存在するのか?
・なぜ親ロシア国家が減らないのか?
・なぜ親ロシア国家が誕生するのか?

これについては、次のように考察しいています。

親米路線や親西側路線では国家運営ができない国家が存在することです。正しいとか正しくないとかではなく、そうしなければ国家運営がより悪い方向に行かざるをえなくなるために、そうならないように親ロシア路線を選択するのだと考えます。

どの国のことかは書きません。

さらに、

本音では親米路線や新西側路線を取りたいにもかかわらず、政治的に対立する国家を近隣に抱え、それと対峙するために親ロシア路線を取る国家が存在することも考えられます。

どの国のことかは書きません。

親ロシア国家を思い浮かべていただくと、この見方に納得する方がいるのではないかと思います。

ここで見誤ってはいけないことは、親ロシア路線を取る国家が存在するこが、ロシアが正しいという根拠には必ずしもならないということです。

最近、ロシアの次の標的は日本であるという意見をよく見かけるようになりました。国際政治に関心が薄い人にはよくわからない見方だと感じるでしょう。根拠としてあげられたことはいくつかありますが、次のような意見が目立ちます。

・日本がロシアを裏切ったから。

つまり、日露双方は、北方領土問題を平和的に解決するために長年取り組んできたにもかかわらず、2022年を境に、つまりロシアのウクライナ侵攻を境に、日本が完全に、親米路線、新G7路線、新NATO路線に傾いたからというものです。

もっともらしい意見ですが、ロシアに日本侵攻を決断させる根拠としては不十分だと考えています。

そもそもロシアが極東に配備している通常兵力だけでは日本侵攻は難しいため、裏切られたという思いだけで日本に侵攻するのは考えにくいです。

ただ、ロシアによる日本侵攻をあり得ると思わせる条件が整いつつあることも事実ではあります。

ロシアは4つの艦隊を持っています。

・セバストポリ       黒海艦隊
・カリーニングラード    バルティック艦隊
・ムルマンスク       北方艦隊
・ウラジオストク      太平洋艦隊

黒海艦隊は、ウクライナ戦争で壊滅的な損害を受けつつあります。ボスポラスダーダネルス海峡がNATO加盟のトルコにより封鎖されていますので、黒海艦隊は世界規模での軍事活動が制限されています。

バルティック艦隊は、ロシアの飛び地カリーニングラードにありますが、バルト海を挟んだ隣国スウェーデンがNATOに加盟したことで、バルト海の制海権がNATOに完全に掌握されることになり、事実上活動が大きく制限されることになりました。

北方艦隊はフィンランドやノルウェーと隣接するコラ半島(幾度かスウェーデンやフィンランドとの係争地となった「カレリア地方」)のバレンツ海に面した街にあります。北大西洋海流(暖流)の影響でかろうじて不凍港ですが、冬場はシベリア方面は凍結するため東方向へは自由に活動できません。西方向はノルェーに加えてフィンランドやスウェーデンがNATOに加盟したため、事実上活動が大きく制限されることになりました。

太平洋艦隊ですが、日本海側のロシア沿海州にあるウラジオストクは不凍港のため、今やこれが唯一の自由に活動できる艦隊となりました。ただし、間宮海峡宗谷海峡は流氷により封鎖されるため、津軽海峡対馬海峡を通過しなければ太平洋や東シナ海や南シナ海へは出られません。

オホーツク海ベーリング海峡では、核弾頭付大陸間弾道弾を搭載したロシアとアメリカの多数の原子力潜水艦が常に水中鬼ごっこをしています。この地域はロシアとアメリカが直接対峙するエリアであるばかりか、いざ全面核戦争になった際に勝敗を左右する重要な軍事エリアとなっています。

このためロシアは、偵察機や爆撃機や戦闘機などといった航空戦力や、潜水艦や軍艦や軍用輸送艦などの海上戦力によって、日本の領空や領海スレスレで際どい活動をせざるを得ません。

これがロシアによる日本侵攻の信憑性を高めることにつながっています。

ただ、ロシアの次なる軍事的な目標が日本であると言い切るまでの説得力はないと思います。北海道と青森の両方を軍事的に制圧しないかぎり、ロシアの太平洋艦隊の圧倒的な優位性は実現しません。それだけの代償を払う覚悟がロシアにあるかどうかは不明です。

ロシアが極東地域で本格的な軍事行動を取れば、NATOと対峙する西側戦線の守りが手薄になり、首都モスクワや旧都サンクトペテルブルグの防衛が難しくなります。ウクライナ東部戦線の維持も難しくなるでしょう。

ウクライナ軍によるロシアのクルスク州への電撃侵攻に、世界史の学習者はにわかに注目したことでしょう。クルスクは第二次世界大戦独ソ戦で両軍の主力戦車部隊が激戦を繰り広げた場所です(クルスク大戦車戦)。人類史上最大の戦車戦と評されています。ここを制した旧ソ連軍が最終的に東部戦線で圧勝しナチスドイツが劣勢に転じたことは、世界史学習者ならよく知っていることだと思います。

もちろん、これに先立ちスターリングラード攻防戦でナチスドイツ軍が包囲され壊滅したことや、クルスク戦車戦とおなじ時期に連合国軍がシチリア島上陸作戦を始めたことも戦況の大きな転換点になっています。

青森の三沢には在日米空軍と航空自衛隊の基地があります。おなじく青森の下北半島陸奥湾内にある大湊には海上自衛隊の基地があります。北海道の千歳には航空自衛隊の基地が、おなじく旭川には陸上自衛隊の基地があり、ロシア極東部隊の活動に対処しています。

今回はかなり脱線しましたが、このような視点で、地理や世界史や日本史を学ぶと、とても興味深いと感じるでしょうし、理解が深まるのではないでしょうか。



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