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地理と世界史の雑学3

九段下の地下鉄駅の地上出口から靖国神社に向かう坂道の広い歩道では、さまざまなチラシが配られていることが多いです。先日そこで東トルキスタンつまりウイグルのチラシが配られていたので受け取りました。

今回は東トルキスタンがテーマです。

世界史や地理の学習者ならなじみのある東トルキスタンですが関心がある人は多くはなさそうです。チラシの作成団体は日本ウイグル協会だそうです。

歴史に翻弄されてきたウイグル族の現在の苦境がそのチラシには生々しく書かれていました。チラシ作成のためにクラウドファンディングで100万円を集めているとのことで、一口1,000円の寄付をしてくれたらさらに詳しい資料をくれると言われましたが、その場では辞退しました。

世界最悪クラスの人権侵害と迫害と大量虐殺が行われているとチラシには書かれてありました。強制労働で製造された繊維製品が日本をふくむ世界で販売されていると日本国内のニュースで取り上げられたこともあります。

さらに深刻なのは臓器移植です。ウイグル族は酒やタバコを嗜まないので健康な臓器を摘出できるということで、強制収容された膨大な人数のウイグル人から強制的に摘出された臓器が臓器移植市場に出回っているそうです。

チラシでは、日本の大手製薬会社の日本人社員が中国当局にスパイ容疑で拘束されたのは、この臓器移植の深刻な状況を見て知ってしまったからだと断定的に書かれていました。

また、ウイグル人が暮らす地域が長年にわたり核実験場とされてきたことで放射線被害も深刻なのだと書かれていました。

おなじような核実験による健康被害は西トルキスタンつまり中央アジアでも起きています。東トルキスタンとの違いは、西トルキスタンで核実験を行っていたのはロシア軍だということです。東トルキスタンで核実験を行っていたのは中国人民解放軍です。

東トルキスタンは清朝以降に中国の支配下に入り、西トルキスタンはロシア(旧ソビエト)の影響下に入りました。チラシでは第二次世界大戦後に人権問題が深刻化したと書かれていましたが、それよりも古い歴史についてはふれられていませんでした。

おなじトルコ系ではありますが、カザフスタンはカザフ族、ウズベキスタンはウズベク族、トルクメニスタンはトルクメン族、キルギス(キルギスタン)はキルギス族、ウイグルはウイグル族と部族が違います。タジキスタンはイラン系のタジク族でトルコ系諸部族とは民族的なルーツが違います。

大学受験生は、中央アジアは「カウトキタ」(買うと来た)と覚えておきましょう。

「カトウキタ」(加藤来た)はお勧めしません。位置関係が正確には覚えにくいからです。地図帳で確認してみてください。白地図を使って定着させましょう。

気候はほとんどが「ステップ気候(BS)」か「砂漠気候(BW)」で一部が亜寒帯性湿潤気候(Df)です。乾燥した気候のため良質な「綿花」の栽培が盛んです。カザフスタンでは「ウラン」(原子力発電や核兵器の原料)や「石油」が取れます。「ソユーズ」で有名なロシアの「バイコヌール宇宙基地」はカザフスタンの「シルダリア川」の流域近くにあります。「アムダリア川」が注ぎ込むカザフスタンとウズベキスタンにまたがる「アラル海」は運河建設や灌漑農業で水量が大きく減少し湖面積が壊滅的に縮小したことが大学入試でしばしば出題されます。

アナトリア半島のトルコ、中央アジアのトルコ系国家、中国の自治区となったウイグルが、こうした問題に共同して立ち向かっているようには見えません。しようとしてもできないのかもしれませんし、しようとしていないのかもしれません。しているのに知らないだけなのかもしれません。

注目されているとは言い難いトルキスタン問題ですが、これらの問題は、いつ、どのようにして、解決へ向かうのでしょうか。

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