vol.12 世迷言を笹舟に乗せて…日々の思い出事を書き記す

鬱っぽい症状が出始めてからどのぐらい経っただろう?毎日動悸がして、震えたりする。ストレスが体を突き破って飛び出してきそうだ。鬱と言えば落ち込んだ感情を想像するけれど、本当に隠し持っているのは怒りだろうと思う。

理解されない痛み、見殺しにされる苦しみ。助けを呼びたくても呼べない理不尽な環境に対する、強烈な腹ただしさ。

自分という戸棚があって、引き出しを開けたら全部怒りなんじゃないかとすら思う。優しさっぽいもので無理に包んであるけれど、隙間なく詰まっているのは何を隠そう怒りです。

怒りを感じると、頭が痛くなる。怒りのエネルギーみたいなものが、頭に一気に押し寄せてくる。感じないようにするために、鬱っぽく落ち込んでみたりする。自分のせいだと思うようにしたり、投げやりになったり。

怒っても仕方がないや…そう思ったのは、小学生の頃だったかな。諦め。期待しなくなり、怒りは悪いものとして追いやられた。反抗期に入る前に家庭が崩壊し、私は感情を出す場所を失った。家では申し合わせたように誰もまともに会話しなくなり、たまに話せばバカにされるだけだった。

そうやって長い時間かけて作られた怒りは、消えることなくマグマのように私の奥底で渦巻いている。この怒りを取り出せるのは、本当に安全な場所でだけ。信用できるセラピスト以外無理だった。

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今日は、仕事の後にやっと心療内科に行くことができそうだ。本当は行きたくなかったが、とにかく家族に今の辛さをわかってもらうために受診を決めた。

自分の場合、鬱っぽくなった原因がはっきりしており、状況を変えるためには周囲の補助が必要なのだが、それを医師に相談しても医師もどうにもできないんじゃないかと思ってしまい、乗り気ではなかった。

でも、選んだ病院は、なるべく薬を使わずカウンセリングと食事療法で改善してくれると言うので、少なくとも体調を万全にすれば少しは状況改善に向けて行動する気になれるかも…という気持ちにもなった。

あと数時間で診察だけれど、久し振りに緊張している。なぜか。それは、出産して子供を持つようになると、途端に私のことなど誰も気にかけなくなり、すべての注意は子供に向けられるようになったからだ。

子供というフィルターを通してみる私。お子さんがいるから~だよね、と。それで何でも決まる。私という存在は、どんどん遠方へフレームアウトしていって、いつも子どもが中心に位置している。

カウンセリングなど、しばらくぶりなので、すっかり忘れていた。私は超緊張してしまう人間だということを。怖いんですよ。自分に意識を向けられるのが。意識を向けられた途端、私は小学生時代の自分に舞い戻る。

「表に出てはいけない」
「自己主張してはいけない」
「空気を読んで大人しくしていなさい」

これが、私にかけられたリミッティングビリーフ。以前のカウンセリングでだいぶ解除してもらったのだけれど、やっぱり本質的なところでは、びくびくしている自分がいるんだよね。それでいいけどね。

本当は、夫に早退してもらって夕方に子供のお迎えに行ってもらう予定だった。でも、仕事の後にお迎えに行くのがしんどいと言い出し、結局休みを取ったようだ。残念。園のお迎えの雰囲気をわかってほしかったな。何年も経つけれど、いまだに一度もお迎えに行ったことがない夫。行ったのは参観日の数日と入園式だけ。先生にいつも、お父さんを知らないと言われる。

それでも、2日前から咳をし始めた子供を病院に連れて行こうか?と100年の奇跡のような発言をしてくれた。いつもなら、子供が咳をしだすと「病院に連れて行った方がいいんじゃない?」と私に連れて行くように言い、私の都合が空かずに自分しか連れて行く人がいないとわかると、突然意見を翻して「やっぱりそんな大したことないんじゃない?行かなくていいよ~」などと平気で言うのに。

やはり、私が心療内科に行くと決めたことが大きかったのだろうか。そして、園を休んでいるので給食がなく、自分で子供の昼食を作ると言い出したことにも二重に驚いた。

結婚した途端に料理を断固拒否していた夫が、子供の昼食を作る…?それは素晴らしい。本当にありがたい。冷凍しておいた炊き込みご飯と、冷凍のポテトがあるので、それに目玉焼きとお味噌汁と追加するらしい。もしかしたら、鮭のムニエルも足すかも…と言っていた。やれば出来るじゃないか。

しかし、早朝に起きたわりにはやはり段取りが悪く、結局子供の用意は一切できなかった夫。自分の朝食を食べて寝室に掃除機をかけただけで1時間半も経っていた。驚きだ。そんな豪邸の寝室じゃないのにね。皿は私が洗ったんだよ。

子供を起こしてトイレに行かせ、手を洗わせて食事の用意を一緒にする。食べたがらない食事を何とか食べさせ、残したものやお皿を片付けて洗う。テーブルを拭く。

動き回る子供に服を着せる技術も少しは上達した。すぽっと脱がせて間髪入れずに新しい服を被せる。口元を拭いて歯磨き。病院に行くための診察券やら医療証やら保険証、念のためのオムツや着替え、ティッシュやハンカチなどをトートバッグに詰める。

これだけのことが、慣れていない夫には気の遠くなるような作業らしい。実際に夫がしたのは、ローションと日焼け止めを塗ることだけ…。

あとは、自分の髪型を整えて着替えるのに1時間かかる。女性よりはるかに時間をかける。異常に人にどう見られるかが気になるらしく、何度言っても改善されることはない。

それでも、病院へ連れて行ってくれること、昼食を作ってくれることに心から感謝した。すべてをつかさどる神にも感謝を込めてひざまづきたいくらいの気分だった。ありがとう。

ここは、素直にありがとうと言うべきだね。
ごめんね、色々書いてさ。
ありがとう。



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