引きこもり青年と人質モデルの違和感
映画「名も無き世界のエンドロール」を観てきた。
率直な感想はTwitterでつぶやいてしまったので、こちらはまた別の角度から書く。特定の役者さんのファンの方や、ネタバレ回避したい方には閲覧非推奨です。
正直、期待値が大きすぎたのか、自分にとっては不完全燃焼な作品であった。`ラスト20分の真実`なんて煽りが大きすぎたのか、がっかり感みたいなものが残ってしまった。
なんでそうなったのか?
がっかりポイントを少し考えてみたところ、2点浮かび上がった。
一つは、物語序盤で出てくる引きこもり青年。
もう一つは、中村アンの人質役演技だ。
引きこもり青年は、様々な条件が合致したために戸籍の買い取りを提案されてしまう人物だ。つまるところ、あなたは消えてくださいと言われる。
そんなことを言ってくるヤバイ人間が自宅に乗り込んできたときに出た言葉が、
「お母さーーーん!?」だ。
お母さん!?変な人が入ってきたよ!?から始まり、戸籍買い取りの話しをしたときには「お母さんはいいって言ったの?」だ。
彼は新卒入社した会社を2ヶ月で退職して以来引きこもっているという設定らしい。
こんな風になるか?
中高生とかの若い引きこもりなら母親に依存するのもわかるけども、社会人経験のある青年が引きこもってここまでなるか?
もともとマザコン気質なキャラだったのかもしれん。
それにしてもしかし、この全てを母親頼りにしている青年の気持ち悪さが違和感あった。
もう少し、無気力感があっても良かったのかもしれん。
ただ逆を考えると、母親に守られると信じていたからこその「お母さんはいいって言ったの?」という台詞だったと考えると、なんとも言えない絶望感を醸し出していて、良い。
ともかく、なんだかこの引きこもり青年のキャラクター像が現実離れしている感じがして、序盤から頭の中が???となった。私は。
そして物語のラスト。
長年付き合ってきた彼氏にプロポーズされるかと思いきや、自分を殺すために近付いてきた人間だったと知って錯乱する美人モデル。
個人的には、中村アンの女優転向は成功してると思う。
地道に演技の勉強をして実績を積み重ねてきてるなと好意的に観ています。
しかし今回は、演技が一本調子だったかなと少し残念。
拘束されて身動きが取れず、爆弾が設置されていることも確認した彼女。
殺されるという緊迫感。
高校生のときの恋人をひき逃げで亡くし、犯人(=中村アン。大物政治家の父親によって全てをもみ消した。)を殺すためだけに人生を捧げてきたこのサイコパス野郎。
「頭おかしいんじゃないの!?」
このブチギレ絶叫は最高だった。
しかし拘束時間が長くなるにつれ、このような状況だと人はどう行動するのか。
立てこもり事件でよく聞くのが、犯人に拘束された人質は、犯行動機を聞いたりともに長い時間過ごすうちに犯人に気持ちが動いてしまう。加担してしまう。寄り添いすぎてしまう。
このシチュエーションも似たようなものだった。
つまり中村アンには、いつまでもブチギレてないで、彼に寄り添い許しを請うような態度が必要だったのではないか?
何度も「頭おかしいんじゃないの!?」と叫ぶだけで、興醒めしてしまった。
演技の強弱をもう少しつけて欲しかったかなぁ。
(まぁそれだけ人を罵るクズ女ってキャラクター設定なら、大成功だとも言える。)
なんて。
素人ながらに残念ポイントはここかなと。
真剣佑の絶望サイコパス演技はすごい良かったので。物足りなさが残ってしまった。