美食のにっぽん丸で初クルーズ 2024 - 華のおんなソロ旅
大きな仕事が一区切りつき、なにか自分にいつもと違ったご褒美をあげたいと思いついたのが、前から乗りたかったクルーズ船の旅。最近、精力的にソロ旅をする私だが、クルーズ船はちょっと敷居が高い。船内でソロ行動するのはなんでもないのだが、ひとりで乗ると乗船料ががぜん高くなるのである。調べてみて改めてクルーズ船の多さに驚いたが、ひとり参加では一部屋の室料全額を払う船もザラである。めったにない機会だから奮発する手もあるが、2人で利用している人の倍額と思うとちょっと面白くない(笑)。そこで比較的追加料金が少なく、乗船しやすい船を探すことにした。
よく、定年になったら退職金で世界一周のクルーズ旅をしたい、などと言われているが、私は幸いなことにそれには全く惹かれない。飽きっぽいので、どんなにゴージャスな船でもそんなに長く乗っていられないのである。だからいわゆるショート・クルーズでも十分。ただ、食べることにはこだわるので、食事の美味しい船がいいなあ、と探していて、美食で有名な日本のクルーズ船、にっぽん丸にたどり着いた。2泊3日で下船観光なし、ワンウエイなので帰りは自前になるが、休みも取れそう。私のニーズにはぴったりだ。
どのクラスの部屋を選ぶかは、悩み多いところだ。追加料金のことを考えると安めの部屋(にっぽん丸で言うと「ステート」など)を選んだ方がよいのだけれど、せっかくの機会である。そんなに外を眺めるわけではないが、窓のない部屋は閉塞感がある。そこで選んだのが「デラックスシングル」。数室しかなく、発売前から業者に押さえてもらったのだが、これが大正解だった。「デラックス」と付くと、「スイート」に準じていろいろな特典があるのである。これから、おひとり様で乗られる方にはぜひちょっと頑張って乗られることをお勧めしたい。
さて、前置きが長くなったが、いざ乗船。函館港を23時に出港するのだが、15時30分には乗船可能(なお、「デラックス」だと乗船も下船も優先順位が高い)。部屋に入って荷物を解いて、全員必須の避難訓練もあるものの、あとはもう、船内ライフの始まりである。
クルーズ船では、毎日船内新聞が配られ、イベントの時間帯が書いてあるので、行きたいところに自由に出向く。よく計画をしないと行きそびれてしまうので注意である。夜遅くなると、お腹はいっぱいだわ、お酒は入っているわでだんだん眠くなってくるのだが、ここは頑張りどころだ(笑)。
なお、気になるのは「ドレス・コード」の「カジュアル」とはどの程度のものかということだろう。結論から言うと「カジュアル」と言えば本当に「カジュアル」である(笑)。私は、自分のこだわりで、メイン・ダイニングでは少しドレッシーにしたが、逆に浮かないようにと適度に考えた。スニーカーやサンダルではエレガントだとは思えない方なのて、バレエ・シューズ持参。これはかさばらず重宝した。夜着は備え付けていないが、私の部屋にはバスローブがついていることがわかっていたので、代用することにした。支払いは、客室のカードキーを兼ねた乗船証がキャッシュレス機能も持っている。乗船したらすぐクレジットカードに紐づけておけば、最終日に精算の時間を取られることがない。乗船中はただ楽しく過ごせるようにとよく考えられている。
食事は、噂に違わず美味。そして結構量が多い。名物の「ローストビーフ」はたしかに絶品で、フルコースのあとで厚切りで出てくるのでたいらげるのは大変だが、ここはしっかりいただかなければ、あとで夢に見る(笑)。私はその後のデザートを残してしまったが悔いはない。別売りの飲み物が少し高いのが難点。洋食コースでは、いつものようにワインを合わせようとしたらとんでもないことになりそうなので、ビールとグラスワインを1杯と控えめにした。船には、300人ものスタッフが乗船しており、客一組につき、一人の担当がついて御世話してくれる。日本人はほとんどおらず、海外の人ばかり。日本語はたどたどしいが、意思の疎通には困らないところはよく訓練されている。
他の名物は、朝のビュッフェのカレーライス、リドテラスで何度でも自由にもらえる、ゴディバのショコリキサー。これは楽しみにしていたのだが、日程中、2杯どまりだった。実は乗船前にアレルギー予防のために飲んだ薬ですっかり胃を荒らしてしまい、いつもの驚異的な食欲(?)が出なかったのである。ハンバーガーも美味しいそうだが、手が出ず。デラックスルームの特典の夜食弁当も、いつもなら逃すことなどありえないのだが、パス。これは全く涙ものだった。以下の写真は順不同になるが、悪しからず。
イベントもいろいろあるが、私は身体を動かすゲームなどには参加しないと最初から決めていたので選択は楽だった。映画上映もあるが、家で動画配信で観られるものをわざわざ観にいくことはない。何回かにわたったハウスバンドのコンサートやスパニッシュ・ギターの演奏が、初めて聴いたがとても良かった。やはり私は音楽が好きだ。ホールでは、客席に50人ほどか。今回は200人乗船しているそうだが、どうしているのだろう。乗船者の平均年齢は63歳とのことなので、もう寝てしまったのか。バンドの選曲は我々の若い頃の懐かしいものばかりである。フィリピンでオーディションを勝ち残ったボーカリスト他選りすぐりのバンドメンバーだそうだが、彼女は生まれてもいなかった時の異国のヒット曲を懸命に覚えたんだろうね。
あまり期待していなかったが実は一番気に入ったのは、「レコードアワー」。ラウンジで、リストの多くの曲の中から選んでリクエストをすると、懐かしのLPレコードでかけてくれる。近くにバーカウンターがあるので、好きなお酒をいただきながら(もちろん無料)、しばし浸る。アース・ウィンド・アンド・ファイアー、ビリー・ジョエル、スティービー・ワンダーが次々とかかっていく。見渡せば、シニアのご夫婦もちらほらと。定年を迎えたり、子どもを独立させたり、親を見送ったりして、なにかの節目を迎えた方々の記念旅のようにも見える。女性の友人同士、私のようにおひとり様を満喫している人もいる。楽しんでおられますかな、ご同輩の皆様。私たちのこれまでとこれからに乾杯、です !
9時に入港して、これだけの人数が降りるのには相当時間が取られるかと思ったら、デラックスルームなので早く下船できた。おかげで、11時開演の歌舞伎座の昼の部になんとか間に合ったのは以前の記事のとおり。荷物は宅配便で送ったから身軽である。あと丸一日ある休日をどうするかも考えておかなければもったいない。
あっという間に終わった2泊3日のクルーズ旅だった。できればもっと飲食したかったし、カジノは混んでいて行けなかったのが残念。寿司バーでおつまみをつまみたかっし、ホライズンバーでオリジナルカクテルをいただきたかった(どれだけ食べるんじゃ・笑)。プールはリドテラスの中央の小さなもので、皆さんに見られながら入るのはちょっとな、と予習した動画で思っていたので今回は入らなくて正解。ただ、オシャレな水着姿の女性がひとりで悠然と泳いだあと、テラス席で背筋を伸ばしてショコリキサーを飲んでいた様子を見たがとても格好良かった。きっと船内でこんな風に過ごしたいと楽しみにしながら乗船したんだろう。非日常体験はそう来なくてはね。
たいていのことは一回体験すれば満足するし、他にやりたいこともいろいろある私は、今後もクルーズ旅をするだろうか。前にはもうひとつの日本船、飛鳥に乗ればもういいかなと思っていたが、今回のリベンジもあるのでまたにっぽん丸に乗って、今度こそ心置きなく食べまくりかもしれませんね(笑)。