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司馬遼太郎記念館(東大阪市) 2025 - 華のおんなソロ旅
関西に出向いたら、思いがけず半日時間ができた。さあ、どこに行こうか。国立文楽劇場に行くにはちと中途半端。そこで、前から気になっていた司馬遼太郎記念館に行くことにした。文庫本の最終ページに載っている地図を見るたび、一度行きたいと思っていた(なお、司馬遼太郎の「遼」はしんにゅうに点がひとつ多いのだが略記させていただく)。
なんばから近鉄奈良線に乗り換えて河内小阪駅まで。大作家のご自宅があるにしては素朴で静かな佇まいの地である。駅の前に大きなアーケード街があり、記念館への順路が示されていて、方向音痴の私も迷いなく辿りついた。
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記念館は司馬さんの没5年後の2001年、ご自宅に安藤忠雄氏設計の建物を隣接させて開館した。門を入ると自販機で入館券(800円)を購入。まずは司馬さんが執筆したり、休んで庭を眺めていたという長椅子がある書斎が窓越しに見えるスポットへ。その庭というのもこじんまりとした雑木林で飾り気がなく、生前の司馬さんがここで静かに過ごしていたであろう様子が目に浮かんだ。
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記念館の入り口はゆるやかなカーブを描いた道だが、司馬さんが好きだったという菜の花がプランターにたくさん植わって飾られていた。指宿から届いたという。司馬さんの命日、2月12日の菜の花忌も近い。
中に入るとなんと言っても地下1階から高さ11メートルの壁面の6万冊の蔵書に圧倒される。ほとんど趣味らしい趣味のなかったという方の偉業に、今さらながら感銘を受ける。展示室奥の天井には、人の顔にみえるシミがあって「竜馬の顔だ」と話題になったそうだ。
私が司馬作品を知ったのは、大好きな大河ドラマの原作としてであった。こどもの頃は、大河で描かれていることこそが史実であると信じており、原作を読むようになって「司馬史観」なる批判めいたことばがあるのも知ったが、司馬作品への敬愛は変わることがなかった。取り上げられた人物は多岐にわたるが、結構好き嫌いのはっきりした方のようである。幕末のある要人など、暗殺未遂で九死に一生を得たが後に汚職などで有名になったので、「助かって生き恥をさらさない方がよかった」などとにべもないのだが小気味良い。またなんといっても司馬作品は文体、リズムが良いのである。私はジムでエアロバイクを漕ぐときによく文庫本を読んでいるのだが、段々息があがってくると長い文章は頭に入りにくくなる。その点、司馬作品は気持ちよくインプットされるのでぜひお試しあれ。
館内放映のビデオもゆっくり鑑賞し、記念にお土産も買って大満足である。マグネットはいろいろな作品名があったが、迷ったあげく、司馬さんが一番自著で好きだったという「燃えよ剣」、私の大好きな大河の原作「翔ぶが如く」にした。
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この国のことをずっと思い続けていた司馬さんがご存命なら、今の日本人をどのようにお感じだろうか。インターネットは世の中を限りなく便利にしたが人心は荒む一方のようで、右を見ても左を見ても利己的な事件ばかりである。せめて心穏やかに、司馬作品を読み続けることで気持ちだけでも豊かに送りたいものだと改めて痛感させられた、貴重な休日の午後でした。
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