ice cream_23
23
かなり気温が落ちていた。上着を持ってこなかったことを後悔した。
夕暮れ時で、商店街が活気を帯びていた。
丸文字で150円と書かれた焼き鳥屋のネオンが明滅する。
隣に住む中年女性が、怪訝そうに、エレベータの方を、首を長くして見ていた。
目が合うと、
「大丈夫かしら、さっきの子―――」
といって、部屋に入っていった。
「気にするな―――急げ」
入真知はエレベータホールでボタンを押した。
誰が乗っていったのか―――最上階まで行っていたらしい。
降りてくるまでに時間がかかった。
扉が開いて、乗り込もうとしたその時だった。
何かが高速で通過する気配を感じた。
その方向は、横の移動ではなく、縦だった。
刹那に振り返ると、手すりの向こう側で、逆さまになった、姫容李の頭が見えた。
薄い唇に笑みを浮かべていた。
コーンにかろうじて突き刺さっていたアイスで、口の周りがオレンジ色になっていた。
直後に、華奢な胴体と足がみえて、消えた。
入真知の短い悲鳴が聞こえた。
と同時に、べちっという生々しい音が聞こえた。
仮野は思わずエレベータを降りて、手すりから身を乗り出した。
「見ないで!」
入真知が制したが、遅かった。
首と腕が変な方向に曲がり、眼球の飛び出た姫容李が階下に横たわっていた。