無効確認、賃金請支払い、損害賠償等の各請求が否定された事例(平成30年3月28日大阪地裁)
概要
被告会社と期間の定めのない労働契約を締結し、のちに解雇された原告が、被告に対し、原告がパワハラの告発をしたことを発端として、被告が原告に対して違法なパワハラをするようになったこと、原告に対する休業命令及び解雇は違法無効であること、既払い給与が存在することなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償等を求めた。
結論
一部棄却、一部却下
判旨
元従業員の内部告発を発端とする事件であること,平成26年10月から平成27年3月までの元従業員の業務パフォーマンスが「普通」であったこと,課長ら会社の従業員等の全部又は一部が中心となり元従業員の業務パフォーマンスの低下及び精神疾患の根拠を捏造したこと,A職員が元従業員の勤怠データを改ざんしたこと,課長ら会社の従業員等によるパワハラの事実があったこと並びに医師らに注意義務違反があったことの各確認を求める訴え,また,会社が,元従業員に対し,過去の昇降級評価について修正の義務を負うこと及び社宅退去処分により元従業員が手放した家財及び自動車の代金を弁償する義務を負うことの各確認を求める訴え,さらに,平成27年4月からの担当業務変更処分,同年7月からの降級処分及び同年3月の社宅退去処分の各無効確認を求める訴えは,いずれも不適法である。
本件休業命令の当時,元従業員について統合失調症の疑いがある旨の本件意見書には合理性が認められ,元従業員について現に業務パフォーマンスが明らかに低下し,業務に支障が生じていたことに照らすと,会社が,元従業員について,「精神系の疾病のために就業する事が不適当な者」に該当する旨判断したことは合理的であったと認められること等から,本件休業命令を発令した会社の判断には合理的な理由があると認められ,適法有効なものであり,会社がこれを撤回しなかったことについても違法な点は認められないから,本件休業命令の無効を理由とする元従業員の請求は,理由がない。
本件休業命令は適法有効なものであったと認められるから,元従業員は,有給休暇を消化し尽くした平成27年7月27日以降,私傷病による長期欠勤状態にあり,そして,元従業員は,会社の産業医等との面談を拒否し,会社が元従業員の復職の可否を判断することができなかったことに照らすと,元従業員について,本件解雇の時点で,会社の就業規則77条1号の「精神又は身体に故障があるか若しくは虚弱,傷病等のため業務に堪えられないとき」に該当する事由があったことが認められるから,本件解雇は,客観的に合理的な理由を欠くものとはいえず,また,社会通念上の相当性を欠くというべき事情も見当たらないから,本件解雇が違法であるとは認められない。
元従業員に対し,入居許可を取り消すことを前提に,社宅からの退去を求めたとしても,会社の裁量権の行使に逸脱又は濫用があったとは認められないから,会社が元従業員に対し社宅からの退去を求めた点は,違法とはいえず,また,課長は,元従業員に対し,やむを得ない事情がある場合や休日出勤して遅れを取り戻すのであれば,有給休暇の申請を却下しないが,そうでない場合は,同申請を却下する旨を伝えたところ,元従業員から何の回答もなかったため,同申請を却下した等の経緯に照らすと,課長が同日の有給休暇の申請を却下し,出勤するよう指示したことは,不法行為法上の違法なパワハラに当たるとは認められず,さらに,担当業務の変更について,会社に不法行為が成立するとは認められず,本件休業命令及び本件解雇は,いずれも合理的理由があり有効なものであることが認められ,その過程で会社が元従業員に対して産業医との面談を指示したこと等を含めて,これらの処分及びその経緯において,会社の行為に違法な点があるとは認められないから,不法行為に基づく元従業員の損害賠償請求は,理由がない。