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学校法人近畿大学事件(令和1年11月28日大阪地裁)

概要

被告との間で1年間の期間の定めのある雇用契約を締結し、以後7度にわたり同様の契約を締結して、被告の設置する近畿大学医学部生化学教室の助教として勤務してきた原告が、被告に対し、
(1)被告が契約更新に応じなかったこと(雇止め)は、労働契約法19条2号に反し無効であるなどとして、雇用契約に基づき、
〔1〕雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認
〔2〕月例賃金及び遅延損害金の支払
〔3〕夏期手当及び年末手当並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求めるとともに、

(2)被告による雇止め及びこれに至る一連の行為が原告の人格権、名誉権及び学問の自由を侵害するものであるとして、不法行為に基づき、慰謝料等及び遅延損害金の支払、

(3)過去に未払賃金があるとして、雇用契約に基づいて、賃金等及び遅延損害金の支払をそれぞれ求めた。

結論

棄却(控訴しました)

判旨

1.本件要望書等は、その記載内容自体から、雇用契約の終了に関する大学の意向や元助教のなす意思表示の内容は一義的に明確となっているものであり、本件要望書等については、交付時の伝達事項に関わらず、その交付や提出の理由等を職員課等に何らの質問等をしないまま、特段の異議を留めずに、交付翌日に本件要望書を提出していること、さらには、平成27年4月以降にも、自身の雇用継続の希望を改めて大学に伝えたり、雇用継続の可能性について大学に再度問い合わせるといった明確な行動に出ていないことからすれば、元助教は、本件要望書のとおり翌々年度(平成28年4月)以降は雇用契約が更新されないことを十分に理解した上、自己の意思に基づき、その提出に至ったものと認めるのが相当であること等から、平成28年3月末(雇用期間満了時)において、本件雇用契約が同年4月以降も更新されることにつき、合理的な期待があったとはいえないから、労働契約法19条2号に該当しないから、雇用契約上の地位にあることの確認等の請求には理由がない。

2.仮に、平成28年4月以降にも更新することにつき、合理的な期待が肯定されたとしても、助教である元助教の研究業績及びその将来的な見通し等を考慮して、大学が本件雇止めに至ったことは、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」(労働契約法19条柱書)には該当しないから、雇用契約上の地位にあることの確認等の請求には理由がない。

3.本件雇止めは、元助教に本件雇用契約の更新に対する合理的期待があったとはいえず、また、客観的合理性、社会的相当性を備えたものでもあるから、その有効性が肯定されるものであり、本件要望書等の交付は、本件雇用契約の更新に対する元助教の合理的期待を違法に放棄させたものであるとはいうことはできず、大学による違法な権利侵害行為であると評価することはできないから、大学に不法行為が成立する余地はなく、元助教の不法行為に基づく損害賠償請求には理由がない。

4.当事者の合理的な意思解釈として、平成27年度の雇用契約においては、同雇用契約書の「本俸月額」との文言は、本俸及び地域調整手当を合わせたものであり、大学はそのとおりの金額を元助教に支給しているから、平成27年度の本俸及び地域調整手当の支給金額に不足はなく、また、賞与(夏期手当、年末手当)についても、平成27年5月28日付け協約書における算定式に基づき正しく算出された金額がそれぞれ支給されたものと認められ、支給額に不足は存在しないから、平成27年度の賃金及び賞与について未払はなく、元助教の主張する賃金及び賞与請求権は存在しない。

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