准教授の行為はアカデミックハラスメントに該当し、開国の懲戒処分が相当であるとされた例(平成25年12月19日大分地裁)
概要
被告・国立大学法人の医学部准教授である原告が、被告に対して、被告が原告に対してなした戒告処分が無効であることの確認を求めるとともに、同処分及びその前後にわたる被告の一連の行為が不法行為に該当するとして、不法行為による損害賠償金の支払を求めた。
結論
棄却
判旨
(1)准教授が,再試験が定期試験よりも難しく,本来の評価に基づいて成績評価をすると述べたこと自体は,学生に対する成績評価についての説明として不当とはいえないが,どうなっても知らないという,あえて突き放した言い方をする必要はなく,この点につき相当性を欠くものであるし、
(2)学生が講義中に目薬をさしたことについて,准教授が注意をすること自体は適切であるというべきものの,「アホ面」という表現を用いることは,当該学生を貶める表現で,相当性を欠くものである。
(3)さらに、看護師や被告看護学科の学生が白衣を着用することに関して,「コスプレ」,「汚い」,「白衣のままうろうろ」,「不快」などの表現を用いることは,適切とはいえないと評価される。
(4)講義用プリントをコピーしただけのレポートを提出することは,学生として不適切な態度であって強く非難されるべき行為であるが,当該レポートを実名入りでそのまま掲示し,一度外されたにもかかわらず,自ら,再度掲示したことは,当該学生に対して,執拗に過ぎ,当該学生の不適切なレポート提出に対する態度を戒めるにとどまらず,当該学生を必要以上に辱めるものである。
准教授のこれらの行為は,これを受けた受講学生が客観的にみて不快に感じるに足りる行為に該当しており,現に苦情申立てがなされている現状においては,大学ガイドラインに定めるアカデミック・ハラスメントに該当するものというべきであり,就業規則に抵触する非違行為に該当する。
准教授は,以前に学長らから受講学生の受け取り方や教育効果の有無に言及した指導を受けており,その過失は,一概に軽いとはいい難いこと,また准教授として,研究,学生の指導について責任のある立場にあるところ,他の職員及び社会に対して一定の影響を生じたものと認められること,また大学における過去の同種の非違行為に対する処分との比較においても,懲戒処分として本件処分することは公平性を欠くものとはいえないことなどから,前述の行為につき,訓告処分,厳重注意ではなく,懲戒処分のうち,最も軽い処分に当たる戒告処分をすることは,客観的に合理的な理由を有し,社会通念上相当であって,懲戒権の濫用があったとは認められない。