見出し画像

試用期間満了解雇されたことに対する地位確認請求は否定され、賃金支払いは認められた例(平成27年10月9日東京地裁)

概要

被告会社の従業員であった原告が、試用期間満了日付で留保解約権の行使により解雇されたところ、被告に対し、当該解雇の無効及び賃金の未払等を主張して、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、未払賃金の支払い、未払割増賃金の支払い、及び労働基準法114条に基づき、付加金の支払いを求めるとともに、不法行為又は労働契約上の債務不履行に基づき、損害賠償の支払いを求めた。

結論

一部認容、一部棄却

判旨


元従業員には管理部の責任者として高い水準の能力を発揮することが求められていたところ,十分な時間をかけて指導を受けたにもかかわらず,インプット作業のような単純作業を適切に行うことができないなど,基本的な業務遂行能力が乏しく,管理職としての適格性に疑問を抱かせる態度もあったこと,元従業員は当時試用期間中であり,インプット作業の問題について繰り返し指導を受けるなど,改善の必要性について十分認識し得たのであるから,改めて解雇の可能性を告げて警告することが必要であったとはいえないこと等の事情も考慮すると,本件解雇が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合に当たるものとは認められないから,本件解雇は有効である。
元従業員は,早退又は欠勤により控除された賃金について,元従業員の早退又は欠勤がシニアマネージャーからのパワハラにより抑うつ状態を発症したことによるものであるから,民法536条2項により,上記控除分についての賃金請求権を有すると主張するが,元従業員がシニアマネージャーからパワハラを受け,抑うつ状態を発症したことを認めるに足りる証拠はなく,また,元従業員は,平成26年3月以降の出社を拒否されたとして,同月分の未払賃金を請求しているが,同月以降,元従業員が会社に出社しようとして拒絶されたような事実も認められないから,元従業員が同月に出社しなかったことにつき,会社の責めに帰すべき事由があるとは認められない。
シニアマネージャーが元従業員を厳しく叱責した行為が業務上の指導として社会通念上相当な範囲を逸脱する違法な行為であるとは認められず,また,シニアマネージャーが,元従業員が謝罪した後も大声で怒鳴り続けたとの事実を認めるに足りる証拠はないこと等から,会社に職場環境配慮義務違反があったとは認められず,また,本件解雇は有効であり,違法なものとは認められないから,本件解雇の違法を原因とする損害賠償請求は理由がない。
平成26年2月11日を除き,同年1月6日から同年2月25日までの元従業員のタイムカードに記録された出勤時刻及び退勤時刻が認められるから,同月11日を除く元従業員の労働時間は,上記出勤時刻及び退勤時刻から所定の休憩時間(1時間)を除いた時間であると推認することができること等から,上記期間の元従業員の割増賃金請求は,合計13万5681円の限度で理由がある。
会社は,労働基準法に違反して元従業員に対する割増賃金の支払を一切しておらず,会社のために特に斟酌すべき事情も認められないことから,労働基準法114条に基づき,付加金として上記未払割増賃金と同額の13万5681円の支払を命じるのが相当であり,元従業員の付加金請求はこの限度で理由がある。

いいなと思ったら応援しよう!