【第1審】パワハラに関して和解した後に、和解内容を守らなかったことにつき損害賠償が認められた例(平成27年1月30日横浜地裁)
概要
労働保険事務組合の従業員である原告が、職場のパワハラ等による損害の賠償を求めて被告組合及び個人の被告らを被告として提起した前訴訟において、裁判上の和解が成立したにもかかわらず、その後、被告らが、同和解の合意事項を遵守しないばかりか、被告組合の通常総会等において、共同して原告に対する名誉棄損行為を行ったため、著しい精神的苦痛を受けたとして、被告らに対し、債務不履行又は共同不法行為による損害賠償請求権に基づき、連帯して慰謝料等の支払いを求めた。
結論
棄却 → 控訴
判旨
組合らは,前件訴訟が提起されるに至ったことを真摯に反省しなければならないものであるが,「裁判の話は関係ない。ここではやめるように」「過去はどうでもいいじゃないですか」といった副社長らの発言は,会社の真摯な反省に疑問を抱かせるものではあるが,上記発言が組合の認識に基づくか否かは明らかではなく,上記発言をもって組合が反省していないとまで断じることはできないものであること等から,上記発言が前訴和解の不履行となるものではない。
前訴和解条項第2項は,組合は,従業員との間で和解が成立したことを,組合の全職員に回覧する等して周知させる旨規定しており,前訴和解が成立したことと,和解条項第1項の文言を記載した文書を回覧する等して周知させることを要求しているにとどまり,紛争の発端となった組合らの言動が具体的に何を指すのか,和解成立に至る経緯,「再発防止に努める」と約束した対象行為とは何かについて説明をする義務を課しているものとみることはできないから,本件において組合らに前訴和解の周知義務の不履行は認められない。
平成25年6月4日に開催された組合の通常総会において,副社長1名が,本件訴訟に至る経過等の説明に関し,副社長らと従業員の面談の状況に関し,元従業員がいきなり声を張り上げて,一方的に同じ内容を繰り返し,約1時間近くしゃべりまくって全然こちらの意見を聞こうとしないというふうな状況があったと聞いている旨発言し,また,従業員につき,平成23年ころから,一層激しくなってきて,一方的にまくし立てる旨述べたことが認められるところ,上記副社長の発言は,組合の通常総会において,本件訴訟に至る経過等を説明するに際し,組合が認識している事実を述べたに過ぎず,社会的相当性を逸脱する発言ではなく,総会の場での質疑応答に供せられるものとして従業員の名誉を直ちに毀損するものとはいえない。