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【控訴審】セクハラ言動が認められ懲戒処分、降格人事が有効とされた海遊館事件(平成26年3月28日大阪高裁)

概要

被控訴人(被告会社)の従業員である控訴人(原告)らが、セクハラ行為等を理由として被控訴人から受けた懲戒処分について、懲戒事由とされた事実がなく、手続の適正も欠き、懲戒事由との均衡を欠く不相当に重い処分でもあるから無効であり、懲戒処分を受けたことを理由とする降格も無効であるとして、それぞれ、懲戒処分の無効確認、降格前の地位の確認を求めるとともに、懲戒処分による出勤日数の減少を理由として減額された給与及び賞与の減額分の支払等及び慰謝料の支払等を求めた事案の控訴審。

結論

一部変更、一部認容、一部棄却

判旨

従業員らのいくつかの行為は、企業秩序や職場規律の維持の観点から看過しがたいものといえ、就業規則所定の懲戒事由に該当するが、本件各懲戒該当行為については、従業員らが、女性従業員の意に反することを認識しながら、又は、女性従業員に対する嫌がらせを企図してあえて行ったものとまでは認められず、また、事前の警告や注意、更に会社の具体的方針を認識する機会もないまま、本件各懲戒該当行為について、突如、懲戒解雇の次に重い出勤停止処分を行うことは、従業員らにとって酷にすぎるというべきであり、本件各処分は、その対象となる行為の性質・態様等に照らし、重きに失し、社会通念上相当とは認められず、権利の濫用として無効であるから、従業員らの本件各処分の無効確認請求は理由があり、そして、本件各処分による出勤日数の減少により支給されなかった給与の支払いを求める請求は理由がある
本件各処分は無効であるから、本件各降格は理由がないことに帰し、無効であり、従業員らの本件各降格前の地位確認及び、労働契約に基づき、減額分の支払いを求める請求は一定の限度で理由がある。
本件各処分及び本件各降格はいずれも無効ではあるが、懲戒事由自体は認められ、どの懲戒処分を選択しても降格は可能であって、どのような懲戒処分をするのかについての指針・基準を設けられておらず、適切な先例もない会社が、大阪市の第三セクターであり、職員や顧客の多くが女性であるというその性質及びセクハラに対する社会の評価、対応が厳しくなっていることも考慮して出勤停止を選択したことや、懲戒処分にしたことを前提として本件各降格をしたことが、不法行為上違法とまでいることはできないし、少なくとも過失があるということができないから、従業員らの不法行為に基づく損害賠償請求はできない。

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