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解雇無効地位確認請求は認められたが、慰謝料請求は認められなかった事例(平成30年4月20日さいたま地裁)

概要

原告が、被告・森林組合連合会に対し、懲戒解雇及び普通解雇は無効であるとして、雇用契約上の地位の確認並びに未払賃金及び未払賞与等の各支払を求めるとともに、被告らに対し、被告連合会の理事を務める被告理事らが、一体となって本件解雇を画策し、極めて悪性の強いパワハラを行い、被告連合会をして、本件解雇を行わせたとして、連帯して慰謝料等の支払を求めた。

結論

一部認容、一部棄却

判旨

連合会が主張する事由のうち,広域森林組合への発注,公印の無断使用及び扶養手当の受給に関しては,元職員の行為は,「職務上の義務に違反し,又は職務を怠ったとき」に当たり,元職員に懲戒の事由があると認めることができるものの,広域森林組合への発注については,連合会に実損害を生じさせたと認めることはできず,また,公印の無断使用については,3件中2件につき事後の決裁が得られており,扶養手当の受給についても,元職員はその過誤を認め返納を申し出ているから,これらを懲戒解雇を相当とするほどの事由であると認めることはできず,元職員には一定の懲戒事由がある上,代理人弁護士による相当の弁明の聴取も行われているが,その前提となる調査委員会の調査は十分なものでなく,前記懲戒事由が,それ自体で懲戒解雇を相当とするほどの事由であるとは解されないことからすれば,本件懲戒解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であるとは認められず,懲戒権の濫用に当たるから無効である。
本件において処分として懲戒解雇を選択することはできないところ,本件普通解雇についても同様であるというべきであって,前記懲戒事由をもってしては,「職員としての能力が著しく劣り,又は勤務成績が不良で本会の職員として不適格」とまでは認められず,未だ解雇すべき客観的合理的理由があるとは認められないから,本件普通解雇は,客観的に合理的理由を欠き,社会通念上相当であると認められないから,その権利を濫用したものとして無効である。
元職員の賃金請求のうち給与の請求は扶養手当月2000円を除き理由があり,元職員が平成27年4月に受給した給与に含まれる材木会館職員手当2万円が臨時に支払われた賃金には当たらず,元職員の賃金請求のうち通勤手当については,給与規程によれば,通勤に要する交通費の実費額を支給するものとされ,月の途中で退職,休職した職員に対しては,日割計算により支給するものとされており,実費により日割計算で支給される手当であるから,たとえ元職員が半年分の通勤定期券を前もって購入していたとしても,当該通勤をしていない期間については,請求することはできないから,元職員の最終出勤日より後である平成27年4月1日以降の通勤手当の支払を求める元職員の請求には理由がない。
元職員は,理事らが一体となって元職員を解雇しようと画策し,極めて悪性の強いパワハラを行って,結論ありきで解雇の手続を推し進め,元職員を不当解雇したと主張するが,元職員には一定の懲戒事由があることからすれば,理事らが何らの事由もなく一体となって元職員を解雇しようと画策したなどと認めることはできないこと等から,連合会の元職員に対する本件解雇は違法であるものの,理事らの元職員に対する不法行為の存在は認めらず,そして,連合会がした本件解雇が違法であるとしても,元職員には一定の懲戒事由の存在が認められることからすれば,本件解雇により賃金及びその遅延損害金の支払によってまかなわれない精神的損害を生じたと認めることはできないから,元職員の不法行為に基づく慰謝料請求には理由がない。

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