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期間業務職員の任期満了退職が認められ、損害賠償請求が否定された事例(平成31年4月24日大阪地裁)

概要

大阪入国管理局の事務補佐員(期間業務職員)として採用され就労していた原告が、被告に対し、
(1)任期満了とされた日以降も事務補佐員の地位にあると主張して、同地位にあることの確認及び支払を受けるべき給与及び遅延損害金の支払を求め、
(2)大阪入管の事務補佐員として勤務していた時に、被告の安全配慮義務違反又は職場環境配慮義務違反により右腕の痛みが生じた、大阪入管の職員から違法な嫌がらせを受けた、原告の再採用が決定していたのに原告の意思に反して再採用しなかったことが違法である、雇用保険被保険者離職証明書を違法に変造して阿倍野公共職業安定所に提出した
などと主張して、債務不履行又は国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた。

結論

棄却

要旨

元職員が平成27年4月1日以降も事務補佐員の地位にあるといえるかについて,職員が任期を定めて採用された場合に,その任期が更新されずに満了したときは,当然退職するものとされているから,期間業務職員の地位は,任期の満了により当然に終了するというべきであり,また同号により退職した期間業務職員を再採用することは,任命権者の行う新たな行政行為であると解されるから,国家公務員の勤務関係においては,労働契約関係を前提とする雇止め法理の適用の余地はなく,かつ任期終了後は,新たな行政行為としての採用や任期の更新がない限りその勤務関係が継続することはないというべきであるところ,大阪入管局長は平成27年3月23日付けで元職員宛ての「不採用(期間業務職員)の決定について(通知)」と題する書面を作成し,同日,これを元職員に交付しようとしたこと等から,元職員が平成27年4月1日以降も事務補佐員の地位にあるとはいえず,元職員の地位確認請求及び同地位にあることを前提とする給与支払請求はいずれも理由がない。
元職員の業務量等につき安全配慮義務違反又は職場環境配慮義務違反があったといえるかについて,元職員が担当していた業務は,特に右腕のみに負荷がかかるような内容のものであったとはいえないこと,元職員が超過勤務をしたことはなかったことから,元職員の業務量が本件疾病の発症を予見できるほど多かったとは認められないこと等から,国に元職員に対する安全配慮義務違反や職場環境配慮義務違反があったということはできず,元職員に本件疾病が生じたことについて,国に債務不履行や国賠法上の違法があったということはできないから,元職員の業務量等について,上記義務違反を理由とする元職員の損害賠償請求はいずれも理由がない。
大阪入管の職員が元職員に対して違法な嫌がらせ又はパワハラをしたといえるかについて,行為者とされる職員Aの発言は,事務補佐員の立場にあった元職員に対する発言として不適切な内容のものであったとはいえるものの,元職員も反論する中で,偶発的・単発的になされた発言であると認められ,特に不当な目的に基づくものであったことをうかがわせるような事情は見当たらないこと,その後,職員Aは,首席審査官からの事情聴取に対して上記発言をした事実を認めて反省し,元職員に対して謝罪していることから,大阪入管の職員が元職員に対して国賠法上違法といえるような嫌がらせ又はパワハラをしたとはいえず,この点の違法を理由とする元職員の国家賠償請求は理由がない。
大阪入管局長は,元職員が任期満了により離職した後,元職員に対し雇用保険被保険者離職証明書を送付し,これに必要部分に記入し記名押印又は署名した上で返送するよう求めたものの,元職員から返送がなかったことから,新たに雇用保険被保険者離職証明書を作成し,元職員から記名押印等を得られなかった事情を付記して押印の上,上記手続を行ったことが認められるから,離職証明書を阿倍野公共職業安定所に提出したことが違法であることを理由とする元職員の国家賠償請求は理由がない。

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