【控訴審】技能実習生の未払い賃金等請求に関する紛争(令和1年5月8日東京高裁)
概要
被控訴人協同組合との間の雇用契約により被控訴人の被用者として労働していた控訴人が、被控訴人から解雇の意思表示を受けたところ、この解雇が無効であるとして、被控訴人に対し労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び賃金の支払を求め、原判決が控訴人の請求をいずれも棄却したことを受けて、控訴人が控訴した。
結論
棄却
判旨
元職員の離職票において協同組合が重責解雇と記載したからといって直ちにこれが懲戒解雇を意味するものとはいえず,本件訴訟においても,協同組合は,本件解雇は普通解雇であると主張しているのであり,本件解雇を普通解雇と解するとしても,これによって労働者である元職員の地位を不当に不安定にするとは認め難いから,本件解雇については普通解雇であると解するのが相当である。
元職員の警察への通報(警察に対し,自らが協同組合の職員であることを説明せず,女性の技能実習生が男に拉致されそうだという虚偽の通報をしたもの)は,協同組合の信用を毀損し,又はその業務を妨害するもので,元職員が監査結果報告書(入国管理局に提出するもの)を持ち出したことは協同組合の業務を妨害するものであり,さらに元職員は明示の職務命令に反して外出した上,協同組合に敵対的な感情を明らかにし,協同組合の職場の秩序を乱したものであって,その内容に照らせば,いずれもその程度は強いものというべきであるから,解雇をするについての客観的に合理的な理由があると認められ,そして協同組合の業務を妨害し,その信用を毀損する警察への通報を繰り返したこと,監査結果報告書を持ち出して協同組合の業務を妨害したこと,明示の職務命令に反して外出し,協同組合に敵対的な感情を明らかにし,協同組合の職場の秩序を乱したことによれば,これらの言動によって協同組合と元職員との信頼関係は完全に失われていたといわざるを得ず,個別的な指導等によっても元職員が協同組合の職務に戻ることは現実的に期待できなかったというべきであるから,解雇をしたことについては社会通念上相当なものと認められるから,解雇権を濫用したものとはいえず本件解雇は有効である。