記者の行為は悪質であり懲戒解雇は有効と認められた例(平成26年8月8日東京地裁)
概要
被告・新聞社から懲戒解雇処分を受けた原告が、その解雇は無効であると主張して、被告に対し、地位確認と解雇後の賃金の支払いを求めた。
結論
棄却
判旨
解雇事由1に関して,元記者は,某新聞社スポーツ部記者Aに対し,読売新聞社運動部記者と共謀して,Aから暴行を受けて重傷を負ったかのように装って,慰謝料等を要求し,327万5000円を騙し取ったと認められ,元記者の行為は,犯罪行為であり,就業規則所定の「法規に触れるなど,本社従業員としての体面を汚したとき」,「他人に危害,暴行又は強迫その他不都合な行為があったとき」に当たり,また,元記者の犯罪行為は,新聞社従業員であるAに対するものであるから,「社内の秩序または風紀を乱したとき」に当たる。さらに,元記者は,新聞社の調査に対して,一時的にではあるが,虚偽の報告をしていたのであり,「虚偽の申告または報告をしたとき」にも当たる。元記者の行為は,1か月以上にわたって被害者Aに対して金銭の支払を要求し続けた執拗な犯行であり,犯行態様は悪質である。また,被害額は300万円以上に上るほか,Aは元記者らの執拗な要求によって多大な精神的苦痛を負ったのであって,被害結果は重大であり,
解雇事由2に関して,元記者は,本件当日,読売新聞社運動部記者と共に,Aの携帯電話から,電話帳に登録されていた多数の女性に対して,わいせつメールを送信するなどした上,証拠を隠すため,携帯電話を二つに折って捨てたと認められ,元記者らがAの携帯電話で送ったメールをセクハラと捉えた新聞社女性従業員もいたのであって,多数の女性従業員にわいせつメールを送信したことは,「社内の秩序または風紀を乱したとき」に当たる。この行為も,多数の女性に不快感を与え,Aの名誉も危うくした悪質なものといえ,社内秩序維持の観点からも解雇という形で排除することもやむを得ないといえること等から,懲戒解雇とした新聞社の判断に裁量権の逸脱は認められず,本件解雇は有効である。