【控訴審】セクハラ等に対する慰謝料請求(令和2年9月25日高松高裁)
概要
被控訴人(原告)が、(1)控訴人(被告)らから、労働組合の歓送迎会において容姿を揶揄されるなどのセクハラ行為を受け、その後、(2)控訴人Aから、被控訴人が上記(1)のセクハラ行為をフェイスブックに投稿したことについてパワハラ行為を受け、さらに(3)一審被告Dから、上記(1)の控訴人らによるセクハラ行為を否定されたうえ、被控訴人が上記(1)のセクハラ行為をフェイスブックに投稿したことに関して一方的に非難されるなどのパワハラ行為を受けたと主張して、上記(1)について、控訴人らに対し、共同不法行為に基づき、損害賠償を、上記(2)について、控訴人Aに対し、不法行為に基づき損害賠償を、上記(3)について、一審被告Dに対し不法行為に基づき損害賠償をそれぞれ求めるとともに、控訴人A、控訴人B及び一審被告Dの使用者である一審被告会社に対し、上記(1)ないし(3)の控訴人ら及び一審被告Dの各不法行為に対する使用者責任に基づき、上記(1)について控訴人らと連帯して、上記(2)について控訴人Aと連帯して、上記(3)について一審被告Dと連帯して、それぞれ控訴人ら及び一審被告Dに対する上記の各請求と同額の支払を求めたところ、原審は控訴人らの請求を一部認容したのに対し、これを不服とする控訴人らが控訴した。
結論
一部取消、一部棄却
要旨
女性従業員が病院で勤務し看護学校で学んでいたことなどに関し,Bが執拗に性的な質問を繰り返したとの主張については,女性従業員の供述に変遷が見られる部分があることや,Bの発言を耳にするのが自然な者においてこれを見聞していないこと,その他女性従業員の主張を裏付けるに足りる的確な証拠がないことに鑑み,同主張を採用することはできない。
Aが女性従業員に聞こえる状態で,Bに対して女性従業員が性的対象となるかを尋ねるなどの発言をしたこと,これを受けたBが女性従業員を指して「これはデブ過ぎる」などとその容姿を揶揄するような発言をしたり,Aとのキスを求める発言をしたりしたことは,いずれも女性従業員の人格権を侵害する違法な行為であるといえ,そしてA及びBの発言は,A及びBが一体となって一連の流れの中でしたものであるから共同不法行為に当たるから,本件歓送迎会においてA及びBによる女性従業員に対する違法なセクハラ行為があったと認められる。
Aの言動は,自らのセクハラ行為を記載した記事をフェイスブックに投稿されたことについて謝罪を求めようとしたことを契機とするものであるが,女性従業員をして身体への危害を加えられる危険を抱かせ,畏怖させるに足りる威圧的なものであったといわざるをえず,女性従業員の人格権を侵害する違法な行為に当たるといえるから,本件話合いにおいてAによる違法な行為があったと認められる。
女性従業員は,本件歓送迎会において,女性従業員が性的対象となるかを話したり,女性従業員の容姿を揶揄するなどしたA及びBの発言により精神的苦痛を被ったものと認められ,女性従業員の上記精神的苦痛に対する慰謝料を10万円と認めるのが相当であり,また女性従業員は本件話合いにおいて,女性従業員に身体的危害を加えられる恐れを抱かせ畏怖させるAの一連の言動により精神的苦痛を被ったものと認められ,そして上記の不法行為の性質及び態様,本件の全証拠からうかがわれる女性従業員の心情,その他本件における一切の事情を考慮すると,女性従業員の上記の精神的苦痛に対する慰謝料を20万円と認めるのが相当である。