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【控訴審】局長の言動に違法な部分があり、その点につき損害賠償請求が認められた事例(平成28年10月25日福岡高裁)

概要

一審被告の設置する郵便局において郵便局員として稼働していた亡労働者の妹であり、唯一の相続人である一審原告が、亡労働者が病気休職中に、当時所属していた郵便局の駐車場に駐車した車両内において、ストレスを原因とする致死性不整脈を突発して死亡したのは、亡労働者がその上司である郵便局長からパワハラを受けたためであるなどと主張して、不法行為又は債務不履行による損害賠償請求権に基づき、亡労働者に生じた損害金の一部の支払いを求め、原審は、亡労働者の精神的苦痛に対する慰謝料を一部認容した。

結論

変更

判旨


局長が,郵便局の職員朝礼の際に,亡労働者の同僚の職員を他の職員の前で土下座させたものであって,たとえ,それが亡労働者に対して行われたものでなかったとしても,亡労働者を含むその場にいたすべての職員に対する関係においても不法行為を構成するものであり,亡労働者を含む職員に対する安全配慮義務に違反する行為であったと認めるのが相当であり,また,局長から亡労働者に対する,「窓口には,就かせられん」「いつ辞めてもらってもいい」などという発言は,亡労働者がうつ病に罹患していることを知っていた上司である局長が,窓口業務を希望していた亡労働者に対してする発言としては不適切であり社会通念上の相当性を欠くものであることは明らかであって,不法行為に該当し,会社に安全配慮義務違反があったといわざるを得ず,さらに,うつ病により病気休暇を取得していた亡労働者が職場復帰を求めた際の面談において,亡労働者に対して職場復帰の時期を遅らせることを強く求めた言動も不法行為に該当し,また,会社に安全配慮義務違反があったと認めることができる。
本件言動と亡労働者が被った精神的苦痛及び亡労働者のうつ病の憎悪との間に相当因果関係を認めるのが相当であり,局長の職員に土下座をさせるという社会的相当性を欠いた本件言動に直面した亡労働者が,息苦しさを覚えたものであり,本件言動を目撃した亡労働者が精神的苦痛を被ったことが推認され,局長による本件言動とこれにより亡労働者が被った精神的苦痛及び亡労働者のうつ病の憎悪との間には,相当因果関係が認められるが,他方で,亡労働者の死亡と,本件言動との間に相当因果関係を認めることはできないこと等から,局長の不法行為や会社の前記安全配慮義務違反と亡労働者の死亡との間の相当因果関係を認めることはできない。
局長による本件言動によって,亡労働者が精神的苦痛を受けたことに対する慰謝料としては,その不法行為又は安全配慮義務違反の程度や,これらによって亡労働者のうつ病が憎悪したことに照らすと,300万円が相当であると認められ,損害額の算定にあたり,亡労働者がうつ病に罹患していたこと等を踏まえても,過失相殺及び素因減額すべきでない。

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