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有給に係る未払い賃金請求は有効だが、パワハラは認められなかった事例(平成30年11月2日東京地裁)

概要

被告学校法人との間で労働契約を締結していた原告らのうち、原告A及びBが被告に対し、年次有給休暇取得要件を満たすにもかかわらず年次有給休暇取得日の給与を支払わなかったとして、雇用契約に基づく賃金支払い請求権に基づき未払賃金等の支払いを求めるとともに、原告らが被告に対しパワハラを行ったことが不法行為であると主張して慰謝料等の支払いを求めた。

結論

一部認容、一部棄却

要旨

学園が指摘するとおり,前期と後期との間には約半月,後期と次年度の前期との間には約2か月の期間があるものの,これは日本外国語専門学校が専門学校であることから,各学期間に講義が行われない期間が存在し,講師契約の性質上この間も契約関係を存続させておく実益が極めて乏しいことによるものであり,少なくとも本件においてこれらの期間が存在することを重視することは相当でないこと等から,A及びBが年次有給休暇の申請を学園に対して行った時点で,両者とも継続勤務の要件を満たしていたものといえ,A及びBは継続勤務以外の年次有給休暇取得のための要件を充足しており,そしてA及びBは,平成28年6月17日,学園に対して同年7月5日に年次有給休暇を取得する旨の連絡をしているところ,学園はこれを認めず,同日分の賃金を支払っていないから,学園はこれらの支払義務を負う。
労働者が使用者に対して就業規則の謄写を請求する権利を規定した法令上の根拠はなく,就業規則の謄写自体の可否及びその方法については,基本的に使用者の裁量に委ねられているものと解するのが相当であるところ,講師契約にかかる定型の契約書には労働契約に関する詳細な内容が記載されている上,日本語を母語としない従業員に対しては,英語の翻訳文を交付しており,また講師契約締結の際には,校長が通訳を通じて契約内容を説明していることが認められ,これらの点からすれば,A、B、Cが労働契約の内容を理解することは可能であったといえること等の点に加え,証拠上,学園がA、B、Cに対して就業規則の筆写を強制したり指示したりした事実が認められないことからすれば,厚生労働省の指針に照らしても,学園における運用やA、B、Cに対する対応がパワハラに該当するものとも何らかの違法性を有するものとも到底認められないからA、B、Cの不法行為に基づく損害賠償請求には理由がない。

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