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【控訴審】大学教授の懲戒処分無効確認、損害賠償請求が否定された事例(令和2年2月26日広島高裁松江支部)
概要
国立大学の教授であった控訴人が在職中に学長から停職6か月の懲戒処分を受けたことについて、当該処分は懲戒事由を欠き、裁量を逸脱してされたものであり、また、違法な手続によりされたものであると主張して、当該国立大学を設置する国立大学法人である被控訴人に対し、当該処分の無効確認を求めるとともに、雇用契約上の債務不履行又は不法行為に基づき、停職期間中の給与、賞与等相当額その他の経済的損害の賠償及び慰謝料の支払を求めたところ、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した。
結論
変更
要旨
元教授が,大学院医学系研究科に在籍する歯科医師であり元教授を指導教員としていたAの同意を得ないまま本件履修変更願を作成して提出したというものであり,それ自体が文書偽造と評価されてもやむを得ないもので高い非難に値すること,その結果として,Aの履修形態が昼夜開講コースから昼間コースに変更となり,就労の機会が時間的に制約されることになって,就労しながら修学する予定であったAの生活環境に不利益が生じ,その程度は大きいものであったといえること,元教授は,島根大学医学部歯科口腔外科の教授としてAを指導していた教員で,その職責は重いものであったといえることこと等からすると,本件処分については元教授の主張に係る債務不履行ないし不法行為の原因となるべき違法は認められず,また手続の適法性の点についても,元教授の主張に係る債務不履行ないし不法行為の原因となるべき違法は認められない。
本件処分は,その当時,大学法人に雇用されてその設置する大学の教授の職にあった元教授を6か月の停職処分に付したものであるが,その後の本件訴えの提起を経て,この停職期間は経過し元教授も退職しており,現時点では本件処分の有効性は過去の権利関係をめぐる問題と化していおり,停職期間中の給与,賞与等は支払われていないが,それらについては直截にその支払を請求すれば足り,前提となる本件処分の無効確認を求める利益はなく,退職金についても同様であり,しかも既に支払済みである上,本件処分の有効性が退職金額に影響しないことに争いはないから,返還その他の清算の問題を生ずる余地もないこと等から,元教授の確認請求についてはこれに係る訴えは不適法で,裁判所が請求の当否について判断する前提を欠く。