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税理士法人での懲戒処分に関する紛争(令和1年11月7日東京地裁)

概要

被告法人に雇用されていた原告が被告から訓戒の懲戒処分を受けたところ、同処分は懲戒事由が認められず、懲戒権の濫用により無効であると主張し、被告に対し同処分の無効確認を求めるとともに、不法行為に基づき損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた。

結論

一部棄却、一部却下

要旨

本件懲戒処分の無効確認を求める訴えは,過去の法律関係の確認を求める訴えであるところ,確認訴訟における確認の対象となる法律関係は,原則として現在における法律関係であって,過去の法律関係については,現に存する紛争の直接かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要と認められる場合に限って確認の利益が認められると解するのが相当であり,また,確認の訴えの補充的性質に鑑みると,給付訴訟等の確認訴訟以外の紛争解決手段が存在する場合については,原則として確認の利益があるということはできないから,本件訴えのうち本件懲戒処分の無効確認を求める訴えは,確認の利益を欠くものとして不適法である。
元従業員とAは上司と部下の関係であり、本件報告書によれば,元従業員はAに対して行った業務上の指示やAの態度等について,Aを自らの席の横に立たせた状態で叱責し,また人事部全体に聞こえるような大きな声で執拗に叱責したことが認められ,そして,本件報告書において認定されたの行為の態様,元従業員の行為後にAが泣いていたことなどの事情に照らせば,元従業員のAに対する注意については,職場内の優位性を背景に業務の適正な範囲を超えて精神的,身体的苦痛を与え,又は職場環境を悪化させる行為をしたものとして,法人の就業規則所定のパワハラに当たるというべきであり,そして法人の就業規則において必要とされる手続が履践されたというべきであるから,懲戒事由に基づく訓戒の処分の相当性も認められ,手続上の瑕疵も認められないから,本件懲戒処分が権利の濫用に当たり無効であるということはできず,本件懲戒処分は有効であるから,法人の元従業員に対する不法行為は成立しない。

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