【控訴審】セクハラを理由とした降格に関する紛争(令和1年6月26日東京高裁)
概要
第1審被告・学校法人が設置する大学の教授の地位にあった第1審原告が、教え子である女子学生に対してハラスメント行為をしたなどとして、教授を免じ准教授に任ずる旨の降格の懲戒処分を受けたことについて、第1審被告に対し、同処分は、重大な事実誤認や評価の誤りなどがあって無効であるとして、雇用契約に基づき、教授としての雇用契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、未払賃金等の支払を求め、原審が第1審原告の請求を棄却したところ、第1審原告が控訴した。
結論
棄却
要旨
本件非違行為は、本件出来事により元教授に対して嫌悪感等を抱いているAに対し、本件出来事の直後からメールを複数回にわたって送信したうえ食事に誘ったというものであり、先行する非違行為(学会後の慰労会終了後、AをA宅まで送り、A宅に入って宿泊したこと)によりAが受けた精神的ダメージ等に対する自覚もなく、Aの心情を無視して追い打ちをかけ、Aの不安や不快感を更に増長し、修学環境を著しく汚染するものである。その悪質さは行為の主観的な意図や動機(個人的に親しくなる目的があったこと)も考慮に入れると、決して軽視することができず、本件非違行為及び先行する非違行為を通じて、Aが元教授を宥恕しているとはみられないことも考慮に入れるべきであるから、過去に懲戒処分歴がないことや、元教授主張の降格による不利益等を考慮しても、本件非違行為及び先行する非違行為に対する5年間の准教授への降格という本件処分は不相当に重いとはいえず、本件降格処分は、客観的に合理的理由があり社会通念上も相当であって、学校法人に裁量権の逸脱や濫用はない。