停職処分が有効とされた事例(平成30年3月27日福島地裁)
概要
福島県教育委員会から福島県市町村立小学校の教員に任命され、小学校の校長の職にあった原告が、セクハラを理由に被告処分行政庁から懲戒停職処分を受けたことに関し、同処分には、事実誤認、懲戒処分事由の不特定、手続の不公正の違法があるとして、同処分の取消しを求めた。
結論
棄却
判旨
本件対象行為ないしこれに関わる認定事実は,いずれも,異性職員の容姿,体型及び服装等を取り上げてそれに一定の評価を加える言動や,相手方からすれば,異性関係を詮索されたと受け取れる言動,異性職員のみとの私的な飲食会や旅行に誘う言動であり,これらがそれらの言動を受けた相手方を不快にさせる職場の内外における性的言動又は性的な関心に基づく言動であるとして,セクハラに当たると評価した県教委の判断に何ら不合理な点はなく,元校長も,研修等を通じて,そのような基本的な考え方を理解し,身体的特徴を話題にすること,性的な経験や性生活について質問すること,食事やデートにしつこく誘うこと,性的な内容の電話をかけたり,性的な内容の手紙・Eメールを送ることなどが一般的・類型的にはセクハラに当たり得ることを理解していたのであるから,元校長は,仮に相手が明確に拒絶していなくとも,相手の意に反することがあることは認識しえたものといえること等から,本件対象行為ないしこれに係る認定事実は「相手の意に反することを認識した」状況に準ずる状況下で繰り返されたものといえ,また,元校長が,学校長として,自ら教職員に対し,セクハラの防止について指導すべき一般的な義務を負うべき立場にあったことを考慮すると,本件処分が社会観念上著しく妥当を欠き,裁量権を濫用してされた処分であるとは認められない。
本件説明書では,処分の対象となった具体的行為は明らかになっていないが,本件処分は,一定期間内に断続的に行われた種々の一連の言動を一括して,セクハラと認定したものであって,その事実関係は非常に広範で個別具体的な行為を記載することは容易ではないこと,本件説明書の記載によっても,被告懲戒基準への適用関係をその記載自体から了知することができ,処分説明書に処分事由を記載する趣旨は満たされていることからすれば,本件説明書について,処分事由の記載が不特定又は不十分であるとして,本件処分が違法となることはない。
本件処分に先立ち,平成26年9月9日,市教委による元校長に対する事情聴取が行われているところ,元校長は,反論したい点には反論し,自身の記憶の曖昧な点には,記憶が曖昧である旨留保した回答をしており,この事情聴取が不公正に行われたことをうかがわせる事情は存せず,さらに,元校長は,同月12日と22日には,自分の一連の行動が不適切であったなどと反省の意を表する書面を,市教委や県教委に提出することができている上,同日には,県教委のいわき教育事務所による事情聴取が行われており,このように,本件処分に先立ち,元校長には十分な意見聴取の機会が与えられており,本件処分に至る過程に著しく不公正な点はない。