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看過できないほどの素行不良従業員の解雇が無効とされた事例(平成28年8月19日東京地裁)

概要

原告が、降格及び普通解雇の無効並びに被告会社からの嫌がらせ等の不法行為を主張して、労働契約上の権利を有する地位の確認、降格に伴い減額された賃金、解雇後の賃金及び慰謝料の支払いを求めた。

結論

一部認容、一部棄却

判旨

本件解雇では,元従業員の能力,その発揮,言動,態度等における問題は深刻であり,就業規則の定める「はなはだしく業務能率が悪く,また業務の遂行に必要な能力を著しく欠くとき」又はこれに「準ずるやむを得ない理由」に一応該当すると言うべきであるが,解雇は降格・降給と異なり,労働契約を終了させ,挽回の機会もなく労働者にとって不利益は大きいから,労働者に能力不足,勤務態度不良又は適格性の欠如があっても単に使用者の期待に十分にそわないという程度にとどまらず,労働契約の継続を期待しがたいほどに重大な程度に達していることを要すると解されるところ,元従業員に対しては,再度の降格・降給は相当であるが,本件解雇は,いささか性急で,酷と見ることができ,本件解雇は社会通念上の相当性を欠くため無効であるから,元従業員は労働契約上の権利を有する地位をなお保持している。
元従業員は,無効な本件解雇の後も,労務提供の意思及び能力を保持している限り,賃金支払請求権を失わないが,元従業員は,本件解雇がなければ,平成25年9月半ばころから有給休暇を取得して,同年11月ころから平成26年1月ころまでの約3か月間,産休を取得していたことが認められるから,平成25年11月から平成26年1月までの間は本件解雇がなくても妊娠・出産のため就労できず,就労能力を保持していなかったものと推認され,この間の賃金支払を認容することはできないから,元従業員の未払賃金の請求は,本件降格後の賃金(特別手当を含め年額720万円,月額60万円)に基づいて,平成25年9月から平成26年2月までの期間から就労ができなかったと推認される平成25年11月から平成26年1月までの期間を除いた3か月分(平成25年9月,10月,平成26年2月)である金180万円等の支払を求める限度で理由がある。
本件降格は無効とはいえないから違法性を認めることはできず,また,退職勧奨や面談の繰り返しが,不法行為を成立させるほど違法なものとは認められず,さらに,元従業員が主張するようなパワハラ又はプライバシー侵害の不法行為が成立すると認めることはできないこと等から,元従業員の損害賠償請求には理由がない。

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