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社員として不適格と評価された上での解雇に関する紛争(平成31年2月27日東京地裁)

概要

組織変更される前の被告・会社との間で雇用契約を締結し、プロジェクト・コーディネーターとして勤務していた原告が、業務成績が不良であることなどを理由に解雇されたため、被告に対し解雇が無効であるとして、
(1)雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認
(2)未払賃金及び遅延損害金
(3)解雇後の毎月の賃金及び延損害金の支払を求める
(4)違法な退職勧奨やパワハラにより精神的苦痛を被った
として不法行為に基づく損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めた。

結論

一部認容、一部棄却

要旨

元従業員にはその職位に照らして職務遂行上必要とされる能力等が不足しており,このため期待された職務を適正に遂行することができず,その業務成績は客観的にみて不良であるとの評価を免れないが,元従業員がこれまでの業績評価についても2回は最低評価を免れていること,平成26年以前の業績評価は相対評価であって,同年以前の2回の最低評価から直ちに解雇に値する重大な能力不足が推認されるわけではないこと,平成25年までは業績評価に関与した直属の上司らから改善点の指摘が多いながらも肯定的な評価を受けている箇所も散見されること,会社に貢献しようとする一応の意欲がみられること,業務成績不良等を原因とするものも含めてこれまで懲戒処分を受けたことはないことをも併せて考慮すれば,元従業員は業務成績は不良であるものの,改善指導によって是正し難い程度にまで達していると認めることはできないこと等から,元従業員につき解雇時において「職務遂行能力,業務成績又は勤務態度が不良で,社員として不適格と認められる場合」又は「将来もその職務に見合う業務を果たすことが期待し得ないと認められる場合」のいずれかに該当するとは認め難く,その他に解雇事由に該当する事実は見当たらないから,本件解雇は客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないから無効である。
元従業員が主張する退職勧奨,パワハラ等の事実については,そもそも事実自体が認められないか,元従業員に対する関係で不法行為を構成するとはいえない。

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