見出し画像

【第1審】上司のパワハラ行為の不法行為責任及び使用者責任が認められた例(平成26年11月28日福井地裁)

概要

亡従業員の父である原告が、亡従業員が自殺したのは、勤務していた被告会社の上司である被告A及び被告Bのパワハラ、被告会社による加重な心理的負担を強いる業務体制等によるものであるとして、被告らに対しては不法行為責任に基づき、被告会社に対しては主位的に不法行為責任、予備的に債務不履行責任に基づき、損害賠償を求めた。

結論

一部認容、一部棄却

判旨

Bが亡労働者に対していじめないしパワハラと評される行為をしたことを認めるに足りる証拠はなく,また,亡労働者が平成22年10月6日ころBに対し退職の申し出をしたことは認められるが,この申し出に対し,Bがこれを拒否した上,厳しい叱責暴言をした事実を認めるに足りる証拠はないこと等から,亡労働者の父のBに対する不法行為責任に基づく請求は理由がない。
Aの亡労働者に対する不法行為は,外形上は,亡労働者の上司としての業務上の指導としてなされたものであるから,事業の執行についてなされた不法行為であり,本件において,会社が被告Aに対する監督について相当の注意をしていた等の事実を認めるに足りる証拠はないから,会社は亡労働者の父に対し民法715条1項の責任を負う。
亡労働者は,Aから人格を否定する言動を執拗に繰り返し受け続け,亡労働者は,高卒の新入社員であり,作業をするに当たっての緊張感や上司からの指導を受けた際の圧迫感はとりわけ大きいものがあるから,Aの言動から受ける心理的負荷は極めて強度であったといえ,この亡労働者が受けた心理的負荷の内容や程度に照らせば,Aの言動は亡労働者に精神障害を発症させるに足りるものであったと認められ,そして,亡労働者には,業務以外の心理的負荷を伴う出来事は確認されていないところ,亡労働者がロープを購入し,遺書を作成したと思われる平成22年11月29日には,Aの言動を起因とする中等症うつ病エピソードを発症していたと推定され,正常な認識,行為選択能力及び抑制力が著しく阻害された状態になり,本件自殺に至ったという監督署長依頼に係る専門医の意見はこれを採用すべきものであるといえ,Aの不法行為と本件自殺との相当因果関係はこれを認めることができる。
亡労働者の逸失利益は,4727万3162円であり,また,亡労働者が自殺に至った経緯,生活状況等,諸般の事情を考慮すると,亡労働者の死亡慰謝料は2300万円とするのが相当であり,亡労働者の父の会社に対する請求及びAに対する請求は,7261万2557円等の支払を求める限度で理由がある。

いいなと思ったら応援しよう!