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【1審】セクハラを理由とする懲戒としての停職処分は有効、人事権を行使した降任処分は無効とされた例(平成25年6月28日宮崎地裁)

概要

公立大学法人との間で雇用契約を締結して、被告が設置、運営する公立大学において教授として勤務していた原告が、被告が原告に対してした停職処分及び准教授への降任処分は違法である旨主張して無効確認、講義及び専門演習を一切担当させないこととした措置が違法無効であると主張して、各講義及び各演習の指導担当者たる地位にあることの確認を求め、また、停職期間中の給与、引下げ前の給与と引き下げ後の給与の差額の支払い、違法無効な業務命令等が不法行為に該当するなどとして不法行為に基づく損害賠償等の支払いを求めた。

結論

一部認容、一部棄却、一部却下

判旨

仮に,「講義及び演習の指導担当者たる地位」が「権利又は法律的地位」に当たると解することができたとしても,平成23年度におけるそれが「現在」のものに当たらないことは明らかであるし,平成25年度における教員担当の講義及び演習については制限を加えないことが大学で承認されていること,教員は,別途,不法行為に基づく損害賠償請求をしていることをも併せかんがみると,教員が平成23年度における講義及び演習の指導担当者たる地位を有することを確認することが必要かつ適切といい得るような教員の権利又は法律的地位に対する現実の不安・危険が存在するということはできず,確認の利益がない。
(1)研究室内で学生に対して部屋の電気を消して怖い話をした際に,学生の両手をつかんだり,太ももの辺りを押さえたりした
(2)学生を交えた飲み会の席で,学生の腰に手を回し,寄せるような行為をした
(3)学生を二人きりの食事に誘い,その際,学生に手作り弁当を要求し,その後もその催促をした
(4)研究室内で,学生の頭をなで,その指を触り,その唇を指でさすった、、

ことはセクハラに該当することから,就業規則に規定する懲戒事由に該当する。

(5)学生に対してハートマーク入りのメールを送信した
(6)複数回にわたって学生の肩や手首といった身体に触れた
(7)学生に対して,午前零時に誕生日を祝う内容のメールを送信した
(8)授業において,学生の異性関係に関する話をした、、、、

ことはそれ自体,これを受けた者に不快感を与えかねないものであって,大学の教員としての配慮を欠いた軽率かつ不適切なものであると評価せざるを得ないし,特に教授の立場にある者は,より高い倫理感や見識が求められるものと考えられること等を総合的に勘案すれば,職務に必要な適格性を欠く面があり就業規則に規定する降任事由に該当する。
降任事由とされた事実は懲戒調査委員会においてハラスメント行為ではないが職務に必要な適格性を欠く行為であると評価されたものであるが,教員の行為の具体的な内容,本件降任処分に至る経緯,本件停職処分と本件降任処分との関係等の事情に,教員は,本件降任処分によって大学教授の地位から准教授の地位に降任されたことをも併せかんがみれば,准教授への降任を内容とする処分を課すことについては,教員の上記各行為と結果との間の均衡を欠いているといわざるを得ず,社会通念上相当性とはいえず,大学が有する人事権を濫用したものと認めるのが相当である。

大学が教員に対して研究室の移動,大学図書館の利用時間の制限(午前8時半から午前8時55分)を命じたことは命令等の目的との関係で必要かつ合理的な範囲にとどまるし,学生が研究室に入室した場合に研究室のドアを閉めないことや被害学生が利用することの多い施設の利用を自粛すること求める措置については当該教員に対する業務命令としてなされたものとはいえないし,教員に平成23年度の講義及び演習を一切担当させないこととした措置については,大学が正当な理由に基づいて一定の合理的な期間これを制限することは許容されるものである。

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