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【第1審】職場環境配慮義務違反とした損害賠償請求が否定された事例(令和1年7月3日徳島地裁)

概要

被告・国立大学法人の薬学部の准教授である原告が、同薬学部長であった教授である被告補助参加人からパワハラ行為ないし嫌がらせ行為を受けたとし、また被告には職場環境配慮義務違反があるとして、被告補助参加人Aの使用者である被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料、弁護士費用及び遅延損害金の支払を求めた。

結論

棄却

要旨

Aによる違法行為の有無について,Aと准教授とは直接の指揮命令に服するいわゆる上司・部下という関係ではないものの,学内あるいは学外の教授職への就任,研究活動に直接影響する研究室の予算の配分,その他研究室内の運営等において教授であるAが,同じ研究室内の准教授に対し,事実上一定の影響力を有していたといえ,同じ研究室内に所属する教授と准教授として,Aは准教授に対して,相対的に優位な立場にあったものと認めるのが相当であるから,准教授が主張するAの准教授に対する言動等が,このような准教授に対する優位性を背景として,業務の適正な範囲を超えて,准教授の人格と尊厳を侵害するものであれば,上記のAの言動等は,准教授に対するパワハラとして違法行為となるといえるところ,Aの言動等が違法行為であるとする准教授の主張はいずれも採用することができないから,Aの違法行為を前提とする国家賠償法1条1項に基づく損害賠償義務が大学にあるとする准教授の主張は認められない。
大学の職場環境配慮義務違反の有無について,准教授は,大学が講座経費の適切な配分に向けた調整等を行わなかったなどとして,職場環境配慮義務違反があると主張するが,研究室の講座経費の配分について,准教授が主張する趣旨の職場環境配慮義務を大学が負うべきものと認めるに足りる事情は見当たらず,また人権規則等に部局長がパワハラを行うことを想定した規定がないことをもって,大学がパワハラ等について何らの対応をしていないと評価しうるものではないから,大学に准教授が主張する職場環境配慮義務違反があるとは認められず,さらに准教授は,研究室運営会議が月1回以上開催されていないのに開催を促さなかった,また研究室運営会議において准教授が提案した議題が放置され,あるいは実現されなかったとして,大学に職場環境配慮義務違反があると主張するが,研究室運営会議は定期的に開催されているのであって,研究室運営会議が月1回以上開催されなかったことをもって直ちに大学に職場環境配慮義務違反があるとはいえないこと等から,大学の職場環境配慮義務違反をいう准教授の主張はいずれも採用することができない。

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