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パワハラによるうつ病発症で労務不能になったとして訴えた労働者の地位確認請求が斥けられた例(平成25年3月28日東京地裁)

概要

被告・国とアメリカ合衆国政府との間で締結された基本労務契約に基づき被告・国に雇用され、アメリカ合衆国在日米空軍横田飛行場に従業員として勤務していた原告が、被告・国に対し、
(1)原告に発病したうつ病は、上司のパワハラに起因するものであるから、業務外の傷病による就労不能を理由とする本件解雇が無効であると主張して、労働契約上の地位確認を求めるとともに、未払賃金等の支払を求め、
(2)被告・国は、上司のパワハラ等を防止するなどして職場環境に配慮する義務を怠ったと主張して、同義務違反に基づく損害賠償として慰謝料の支払を求め、(3)上司に対し、原告に対するパワハラが違法であると主張して、不法行為に基づく損害賠償として慰謝料の支払を求めた。

結論

棄却

判旨

上司の言動を含む労働者に対する各行為は,行為によってはその存在が客観的に認められないか,労働者に対して,業務の適正な範囲を超えて,精神的・身体的苦痛を与えたり,職場環境を悪化させたりするほどの違法なものとは認められないというべきであるから,労働者に発病した本件疾病が,本件各行為に起因するものであると認めることはできないし、雇用契約で合意された職種及び所属部隊での就労が可能な程度に回復したと認めることはできないというほかなく,本件解雇は,およそ権利の濫用とは認められず,無効とはいえない。
上司の各行為は,いずれもその職務として,又は職務に密接に関連して行われたものであることになり,その主張からして,国家賠償法1条1項の要件に該当し,民事特別法1条,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う場合に当たるから,上司個人は,民法709条に基づく損害賠償責任を負わないというべきであり,本件疾病が,上司らの言動によるものであると認めることはできないし,労働者について長時間労働その他過重労働の事実を認めることもできないから,労働者による国の安全配慮義務違反の主張は,認められない。

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