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労働契約締結時の説明義務違反、パワハラのいずれも認められなかった例(平成26年8月13日東京地裁)

概要

原告が被告・株式会社に対し、労働契約締結時において労働内容について説明する義務を怠り、また、被告担当者からパワハラを受け、損害を被ったとして、民法709条及び民法715条に基づいて損害賠償を求めた。

結論

棄却

判旨

労働基準法15条1項違反の法的効果としては同条2,3項に定めるところに留まるものであり,直ちに説明義務違反が成立するものではなく,本件のように,正式な労働契約書が作成された時点においては誤りのない労働条件が明示され,元従業員もこれに応じて,労働契約書に署名押印し,労働契約が成立している場合には,最終的には会社において説明義務が果たされているものといえ,また,会社が元従業員に対して,内定段階において,本来はデザイン業務とすべきところ,誤ってコピー・製本業務と明示したことは認められるものの,労働契約書が作成された段階では正しい業務内容が明示されていること,実際に,元従業員は,希望していたコピー・製本業務に従事することができていることからすれば,会社において信義誠実義務違反が成立するとは認めがたいこと等から,最終的には説明義務が果たされているといえ,説明義務違反があるとは認められない。
パワハラについては,行為者とされた者の人間関係,当該行為の動機・目的,時間・場所,態様等を総合考慮の上,企業組織もしくは職務上の指揮命令関係にある上司等が,職務を遂行する過程において,部下に対して,職務上の地位・権限を逸脱・濫用し,社会通念に照らし客観的な見地からみて,通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為をしたと評価される場合に限り,被害者の人格権を侵害するものとして民法709条の所定の不法行為を構成するものと解するのが相当であるところ,本件についてみるに,元従業員がパワハラを受けたと主張する時期や前後の経緯などは明確でないこと等から,本件において会社について不法行為責任が生じているとは認められない。

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