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【第1審】セクハラを理由とした降格に関する紛争(平成31年1月24日東京地裁)
概要
被告・学校法人が設置する大学文学部の教授の地位にあった原告が、教え子である女子大生に対してハラスメント行為をしたなどとして、5年間、教授を免じ准教授に人する旨の降格の懲戒処分を受けたことについて、被告に対し、同処分は重大な事実誤認や評価の誤りなどがあって無効であるとして、雇用契約に基づき教授としての雇用契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、差額賃金の請求をした。
結論
棄却
要旨
准教授が,平成28年5月23日午前2時過ぎ頃,一人暮らしのA宅に入室し,朝まで滞在したという本件非違行為が認められ,同行為は,前記認定に係る准教授の性的な意図に基づくA宅への立入りによるAの修学等に対する悪影響等に照らし,大学ハラスメント規程2条1項11号に定めるセクハラ(本学構成員が,修学,課外活動,教育・研究又は就労の環境において,他の構成員に対する性的発言や行動により,その者に修学,課外活動,教育・研究又は就労における不利益又は不快を与えること)に該当するとともに,前判示に係る准教授の教授としての優越的な地位を利用したA宅への立入りによるAの修学等への悪影響等に照らし,同条1項2号に定めるアカデミックハラスメント(本学構成員が,修学又は教育・研究における優越的な地位を利用した他の構成員に対する発言や行動により,その者に修学又は教育・研究における不利益を与え,あるいはその修学又は教育・研究を困難にすること)にも該当するというべきであり,そして,本件非違行為は,大学懲戒規程2条4号(法人,大学の名誉又は信用を著しく傷つけた場合)及び7号(素行不良で大学の秩序又は風紀を乱した場合)所定の懲戒事由に該当する。
本件処分の懲戒事由となる准教授の行為は本件非違行為に限られるものの,准教授は,終電車が終了した深夜の時間帯に,一人暮らしの女子大学院生であるAの自宅に入室し,朝まで滞在したというものであって,Aに対し,性的自由を奪われるかもしれないという不安,恐怖心,不快感等を与えるものであり,悪質なハラスメント行為といえ,上記行為は,准教授の教授としての影響力を利用してされたものであり,これによって,教授と学生との信頼関係が深刻に毀損され,かつ,大学の名誉と信頼を大きく傷つけたものといえるところ,准教授は,本件処分の決定過程においては,A宅に入室したこと自体は認めていたものの,その経緯について,疲労等により歩行が困難となったため,やむを得ず入室させてもらったなどと不合理な弁解をしており,上記行為について真摯に反省したとみることもできないから,准教授が,本件出来事の直後にAに対して謝罪のメールを送信していること,過去に懲戒処分歴がないことに加え,准教授主張に係る本件処分による不利益の程度等の事情を考慮しても,5年間の准教授への降格が不相当に重いとはいえず,本件処分が社会的相当性を欠くとは認められない。