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従業員からの解雇無効地位確認、損害賠償請求等が認められる一方、反訴での不当利息返還請求も認められた事例(平成28年9月23日東京地裁)

概要

原告従業員が労働契約上の権利を有する地位の確認、被告会社の責に帰すべき理由による欠勤又は無効な解雇で未払いとなっている未払賃金の支払いを求め(本訴)、
これに対し、被告会社が、本訴事件の提起が違法であり、原告には賃金の不正受給があったと主張して、本訴事件提起による損害の賠償及び賃金不正受給による不当利得の返還を求めた(反訴)。

結論

一部認容、一部棄却

判旨

会社は本件解雇を既に撤回し,元従業員もこれを了承し,自己の労働契約上の権利を有する地位の確認を求めているから,元従業員と会社との間では,本件解雇によって仮に労働契約終了の効力が生じていたとしても,少なくとも本件解雇の撤回により,従前の労働契約を復活させる旨の黙示の合意が成立しているというべきである。
会社代表者に社会通念上相当な範囲を超える程度の激烈さ,陰湿さを伴うパワハラに当たる言動があったと認めるには足りないから,会社代表者によるパワハラの存在を前提として本件解雇に違法性があるということはできず,また,元従業員の本件解雇前の欠勤が会社代表者によるパワハラによるものと認めることもできないから,私傷病として欠勤に伴う賃金減額を受けることもやむを得ないというべきであるから,解雇前後の賃金支払請求は理由がない。
会社は,元従業員の欠勤がうつ状態等によるやむを得ないものであるにもかかわらず,職場復帰の可能性を十分に見極めず,元従業員との協議を尽くしておらず,兼業・兼職のため会社での労務に従事していない状況が認められないのに,会社の信用に悪影響を及ぼすような法令違反の有無,程度等も確かめることなく,元従業員に対する配慮不十分のまま,拙速に解雇に踏み切っているというべきであり,本件解雇は,十分に客観的に合理的な理由を備えておらず,その経過も併せて,社会通念上相当なものとはいえないから,本件解雇は解雇権を濫用したものとして無効というべきである。
解雇の告知が労働者に相当な精神的衝撃を与えることは想像に難くないところ,既にうつ状態等で調子を崩していた元従業員にとって,本件解雇は,追い打ちになったと推認され,本件解雇を発端として元従業員と会社との紛争が顕在化・激化し,その間の信頼関係が損なわれ,本件解雇の撤回を経ても,円滑な職場復帰に向け,元従業員が不安を抱かざるを得ない状況になり,それがかねてからのうつ状態等に悪影響を与える可能性もあり,元従業員は相当の精神的苦痛を受けていることが認められ,また,本件解雇は,十分に客観的に合理的な理由を備えておらず,その経過も併せて,社会通念上相当なものとはいえないことも考慮すれば,本件解雇は,不法行為としても違法であり,精神的苦痛に対する損害賠償を認めるべきというべきであり,さらに,会社は,本件解雇を撤回しているが,事後に解雇を撤回したからといって,いったん成立した不法行為が消滅することはなく,元従業員の精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は金30万円と定めることが相当である。
本訴提起は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性に欠ける違法なものとはいえず,反訴請求のうち本訴提起に係る損害賠償を求める部分は認容できない。

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