懲戒解雇が有効とされた事例(平成28年11月16日東京地裁)
概要
被告会社の従業員が、被告の行った懲戒解雇が無効であると主張して、被告に対し、雇用契約に基づき雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、解雇後の賃金及び年2回の賞与の支払いを求めた。
結論
棄却
判旨
元従業員の部下であるA及Bびに対する言動は,理不尽な言動により部下に精神的苦痛を与えるものであり,業務上の指導の範疇を逸脱した違法なものいうべきであり,また,部下であるC及びDに対する言動も,両名の人格や尊厳を傷つけ,理不尽な言動により部下に精神的苦痛を与えるものであり,業務上の指導の範疇を逸脱した違法なものいうべきであるから,元従業員の部下4名に対する言動は,就業規則が禁止する「理不尽な言動により精神的苦痛を与える」に該当し,会社の定める就業規則に違反する行為として,譴責等処分事由に該当し,また元従業員は,平成26年3月に譴責等処分事由に該当する自らのハラスメント行為につき厳重注意処分を受け、一連の行為が不適切なハラスメント行為に当たり,今後同様の行為を行った場合には厳しい処分が下り得ることの警告を受けたにもかかわらず,再度他の部下2名に対するハラスメント行為に及んだのであるから,就業規則所定の「同一事由を2回以上繰り返したこと」に該当することが明らかである。
元従業員は,平成26年3月にA及びBに対するハラスメント行為により会社から厳重注意を受け,顛末書まで提出したにもかかわらず,そのわずか1年余り後に再度C及びDに対するハラスメント行為に及んでおり,短期間に複数の部下に対するハラスメント行為に及んだ態様は悪質というべきであり,また,元従業員による上記行為の結果,Cは別の部署に異動せざるを得なくなり,Dに至っては適応障害に罹患し傷病休暇を余儀なくされるなど,その結果は重大であり,元従業員は,2度目のハラスメント行為に及んだ後も,全く反省する態度が見られず,また元従業員は,自身の部下に対する指導方法は正当なものであり間違っていないという強固な信念がうかがわれ,元従業員の部下に対する指導方法が改善される見込みは乏しいと判断せざるを得ないから,元従業員は,部下を預かる上司としての適性を欠くというべきであり,本件懲戒処分及び本件解雇は,客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当というべきであるから,会社の行った本件懲戒処分及び本件解雇は有効である。