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【控訴審】派遣労働者に対する嫌がらせ行為で派遣元の使用者責任が認められた例(平成25年10月9日大阪高裁)

概要

派遣労働者として就労していた被控訴人(原告)が、その派遣先であった控訴人(被告。会社)の従業員らからいわゆるパワーハラスメントに該当する行為を受け、同派遣先での就労を辞めざるを得なくなったと主張して、控訴人に対し、使用者責任及び控訴人固有の不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料及び遅延損害金の支払いを求め、原審が一部認容をしたため、これを不服とする控訴人が控訴し、被控訴人が附帯控訴した事案において、控訴人の使用者責任に基づく損害賠償請求で慰謝料30万円及び弁護士費用3万円並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるとして認容し、その余はいずれも理由がないとして棄却するのが相当であるとし、原判決を控訴人の控訴に基づいて変更し、被控訴人の本件附帯控訴を棄却した事例。

結論

一部変更、一部棄却

判旨

労務遂行上の指導・監督の場面において、監督者が監督を受ける者を叱責し、あるいは指示等を行う際には、労務遂行の適切さを期する目的において適切な言辞を選んでしなければならないのは当然の注意義務と考えられるところ、本件では、それなりの重要な業務であったとはいえ、派遣先の従業員らの言辞は、いかにも粗雑で、極端な表現を用い、配慮を欠く態様で指導されており、派遣労働者によって当惑や不快の念が示されているのに、これを繰り返し行う場合には、嫌がらせや時には侮辱といった意味を有するに至り、違法性を帯びるに至るというべきである。 2.派遣先の従業員らは、指導・監督を行う立場にある者として、業務上の指導の際に用いる言葉遣いや指導方法について、上司から、指導や注意及び教育を受けたことはなかったことを自認しており、派遣先が、その従業員らの選任・監督について、その注意を怠ったと認めるのが相当である。 3.派遣労働者の就業態度等に起因する過失相殺は、認められない。 4.派遣先は使用者責任を負うものと判断するところであり、派遣先は、正社員である従業員らを製造ラインの監督責任者として選任し、作業担当者らを監督する業務を担当させるに当たり、業務上の指示・監督を行う際の指導方法、指導用の言葉遣い等について何らの指導を行っていなかったことが認められるが、この点は、従業員らの不法行為責任について派遣先が使用者責任を負う以上に別途の評価を行うに足りる控訴人独自の違法行為があったとまでは認められない。 5.従業員らが正社員で派遣労働者が派遣社員であることも手伝って、両者の人間関係は基本的に反論を許さない支配・被支配の関係となっていたということができるのであって、一方的に優位な人間関係を前提に、派遣労働者の生真面目な性格を有する人物に対する言辞としては、社会通念上著しく相当性を欠きパワーハラスメントと評価することができるといわざるを得ないが、他方、従業員らの発言は監督者として、派遣労働者に対する強い害意や常時嫌がらせの指向があるというわけではなく、態様としても受け止めや個人的な感覚によっては、単なる軽口として聞き流すことも不可能ではない、多義的な部分も多く含まれていることも考慮すべきであり、これらを総合すると、慰謝料額としては全体として30万円と認めるのが相当である。

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