【控訴審】女性の妊娠・出産を理由とする不利益取扱いに関し、最も有名な事例(平成24年7月19日広島高裁)
概要
控訴人(原告)は、被控訴人(被告・医療介護事業の協同組合)に雇用された者であるが、妊娠したので、労基法による軽易な業務への転換を請求したところ、被控訴人は、控訴人に対し、他の職場への異動を命じたほか、副主任の地位を免じ、控訴人が育児休業から復帰した際、副主任の地位につけなかったとして、被控訴人に対し、被控訴人の措置は、男女雇用機会均等法9条2項及び育児・介護休業法10条に反する違法無効なものであるなどとして、副主任手当相当額等の損害賠償金を求め、原審が請求を棄却した事案の控訴審。
判旨
棄却
判旨
本件措置1は,理学療養士の妊娠に伴う他の軽易な業務への転換の請求を契機になされたものであるが,協同組合は,理学療養士が訪問リハビリ業務から,他の軽易な業務である病院リハビリ業務への転換を希望したことから,その希望どおり,病院リハビリ業務を行う本件病院のリハビリテーション科に異動させたのであり,副主任を免じたのは,リハビリテーション科には他の理学療養士が主任としていて,副主任を置く必要がなかったからであり,理学療養士もこのことを同意していたものと評価されるのであること等から,本件措置1が,男女雇用機会均等法9条3項に違反するということはできず,人事権の濫用にあたるということもできない。
理学療養士が平成21年10月に育児休業から復帰する際に異動を命じられた施設は,協同組合において,理学療養士の復帰先を複数検討するうち,理学療養士が配置されるなら自分はやめるという理学療法士が2人いる職場があるなど復帰先がしぼられる一方で,理学療養士の希望を聞いた上で決定されたものである上,理学療養士が妊娠による軽易業務転換前に配置されていた部署であったのであり,また,等施設には既に副主任として他の理学療養士が配置されており,理学療養士を副主任に任ずる必要がなかったのであり,協同組合が,理学療養士について,育児休業から復職する際に,妊娠による軽易業務転換前の職位であった副主任の地位につけなかった本件措置2が,男女雇用機会均等法9条3項,育児介護休業法10条に違反するということはできず,人事権の濫用にあたるということもできない。