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奈良見知る3 不空絹索観音ー不空院と     絹索院  …怨霊たちの1250年

不空絹索観音とは、「不空羂索観音菩薩」や、「不空羂索観世音菩薩」などさまざまな呼称がある。尊名の「不空」とは「むなしからず」、「羂索」は鳥獣等を捕らえる縄のこと。従って、不空羂索観音とは「心念不空の索をもってあらゆる衆生をもれなく救済する観音」を意味する。
漢訳経典のなかでは隋時代の6世紀後半に訳された「不空羂索呪経」に初めて現われ、唐の菩提流志(ぼだいるし)が8世紀はじめに訳した「不空羂索神変真言経」にも像容等が詳しく説かれている。経典には様々な姿が説かれるが、いずれも多臂(多くの腕)を持ち、鹿の毛皮を身に纏うのが特徴である。
代表作としては、東大寺法華堂(三月堂)本尊の立像(奈良時代、国宝)や、興福寺南円堂本尊坐像(鎌倉時代・康慶作、国宝)があげられる。
不空羂索観音を本尊とする寺としては、奈良高畑町にある春日山不空院がある。
東大寺法華堂は、不空羂索観音を本尊とすることから、古くは「羂索堂」と称し、周囲の付属建物を含めて「羂索院」と称された。『東大寺要録』「諸院章」には、「羂索院」は天平5年(733年)、良弁が不空羂索観音を本尊として創建したものであると記されている。
実は、東大寺法華堂(絹索院)と不空院は、両者で
 ★不空+絹索=不空絹索
となるのである。
(事実関係は不明であるが)この二つの院については、『怨霊伝承』が残る人物が関係している。
まず、絹索院(現法華堂)については、東大寺要録に下記のように『光仁天皇々子崇道天皇』が登場する。この崇道天皇が等定僧都となって出家入道したことが記されている。そして二十一歳に受戒して此院(絹索院)の住持になったとされる。後に、大安寺東院に移住した。

東大寺要録より

ご承知の通り、
①崇道天皇は早良(さわら)親王であり、後に『怨霊』として桓武天皇に恐 
 れられることになる。崇道天皇社は、奈良市西紀寺町にあるのはご承知の
 通りである。
②不空院は聖武天皇の皇女井上内親王との関連が伝承されている。井上内親
 王は、光仁天皇皇后であったが、天皇に対する呪詛の罪に問われた。井上
 神社も奈良市井上町にある。
この二人は、後に『怨霊』として登場することになる。東大寺お水取りにも読まれる二名である。
 なお鎌倉時代の初期に成立したと言われる『水鏡』には、井上内親王についての話が書かれている。
 当時は、賭け事が結構流行っていたらしい。井上内親王と夫である光仁天皇が賭け事をして井上内親王が勝ったらしい。事前の約束どおり…夜の帳に山部親王(後に桓武天皇)が現れたという。これが高齢であった光仁天皇を疎むことになった、とされている。
 上の話は、当時最高権力者であった『藤原百川』の陰謀とされているが、信憑性はもちろん定かではない。
 しかし当の井上内親王だけでなく立太子していた光仁ー井上の子他戸親王まで廃太子になり、この母子には過酷な運命が待っていた。
 どうやら天智派と天武派の争いはし烈を極めたようである。
 怨霊となった早良親王と井上皇后の二人の怨霊を鎮めるために、奈良市薬師堂町に御霊神社がある。ご承知のように京都にも…。

奈良市御霊神社

 以上は、確たる証拠が現在存在する訳では無いが、共に藤原氏の天皇継嗣に巻き込まれた二名であり、藤原氏の仏像と言われる『不空絹索観音』が封じ込めているのかも知れない。
 なお、天皇の諱(いみな: おくり名)は、もちろん崩御後に与えたものである。奈良時代の後半までの天皇の諱は『淡海三船』によって作られたものである。『淡海三船』とは、、奈良時代後期の皇族・貴族・文人。始め御船王を名乗るが、臣籍降下し淡海真人姓となる。大友皇子の曽孫。若いときに唐人の薫陶を受けた僧であったこともあり、外典・漢詩にも優れていた。現存最古の漢詩集『懐風藻』の撰者とする説が有力である。
 772年:兼文章博士
 777年:大判事
 778年:大学頭
など有名な『菅原道真』と同じ文章博士や大学頭となった。
 話は戻って、よく『武』の字が付く天皇は【天武派】と言われる。
 では『桓武天皇』は【天武派】の天皇と言えるのだろうか?鍵は、『桓』と言う字にありそうである。これを調べてみると、興味ある意味を持つことが分かる。『桓』とは、
 ★棺(ひつぎ)を墓の穴におろすために四方のすみに立てる柱。
(新漢語林…など)
何やら、『武』を墓に沈める、と言う意味もあるのは興味深い。
 ちなみに崇道天皇社は、京終町にある。

崇道天皇社

ここにある由緒書が、下の写真である。

崇道天皇社由緒書


 崇道天皇社の神殿は昨年の近隣火災により一部類焼し、檜皮葺の屋根が焼損した。この修復費用の一部について一般の支援を募集しているとのことでした(Crowd Fundingで11月30日期限)。

 

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