いずみ凜 脚本「風の丘を越えて」の再放送
はじめて聞いたのが20年以上も前。
朝鮮文化の「恨(ハン )」という言葉も、その時初めて知りました。
当時も、ホコリが積もるように恨(ハン )が人の心に巣くっていく。
という一節が胸に残りました。
ちょうど、映画『判決、ふたつの希望』を奥さんと一緒に観たばかりで、
(これ映画館で観たんですが)
小さないざこざが国をあげての大問題になる裁判劇です。
裁かれもしない虐殺や暴力や差別がいくらでもあって、
傷つき禍根を残しても、さして興味を持たない社会(私たち)が存在します。
主人公たちの心の奥底で深く渦を巻く傷ついた感情は、
まさに「恨(ハン )」が生きているといえる話でもありました。
平田満は、今聞いても魅力があるし、他の役者も味わい深い語りが多く、
大人の妹役には不満がありますが、
子供たちと舞台を創っているので、子役の芸達者ぶりに感心しました。
なかなか折り合いもつかない、漂うような心のひだが、
どこか詩的な言葉で綴られ、
特別な幼少期を共に過ごした兄弟たちの輪郭が浮かび上がり、
そのまま青い空と海と鶴が見えてくるような余韻をつくります。
力強くはないけれど、聞き手の心をなぐさめてくれるような優しさがありました。