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青黒インバーターコンボ 解体新書

青黒インバーターコンボ
-基本戦術と倒し方指南-

0.はじめに

 初めまして、藏田真太郎(みすたくる)と申します。この度はGP名古屋2020にて青黒インバーターコンボを使用し、Top8バブルマッチまで行くことができました。惜しくも敗れましたが、12-3の成績で大会を終えたこの素晴らしいデッキについて解説記事を書きました。
 私の主な戦績は、プロツアー『破滅の刻』Top8入選です。そのほかは大きな戦績はありませんが、モダンでデスシャドウ、レガシーではストーム系のコンボをよく回しており、この系統のデッキには慣れ親しんでおります。

 改めて、グランプリ名古屋2020(GP)、ならびにプレイヤーズツアー(PT)参加の皆様、大変お疲れさまでした。蓋を開けてみれば、それぞれで青黒インバーターコンボは使用率トップとなりましたね。

 本ノートでは、青黒インバーターコンボの基本的な戦術、我々の調整したデッキリスト、そして、青黒インバーターコンボの倒し方をお伝えします。青黒インバーターコンボは誕生してから日が浅く、日々様々なリストが生まれており、今後も増えることが予想されます。基本的な挙動の理解とその対策を知ることで、メタゲームが回るきっかけになると幸いです。

 また冒頭に述べた通り、本ノートで扱う我々のデッキはGP、PTの両方で好成績を収めました。GPではTOP8のかかったバブルマッチまでもつれ込む12勝3敗、PTでは構築で7勝2敗でした。GPとPTのリストは一部異なりますが、デッキ選択は正解であったと考えています。

 本ノートの章立ては次の通りです。無料部分だけでも基本的な内容はカバーできるように記載しております。

  ※★は有料部分とさせていただきます
  0.序文
  1.青黒インバーターコンボの基本ゲームプラン
  2.デッキリストとカード選定
  3.各マッチアップのサイドインアウトおよびゲームプラン★
  4.検討カードと不採用カード★
  5.青黒インバーターコンボの倒し方★
  6.今後のインバーターコンボ★


1.青黒インバーターコンボの基本ゲームプラン

 一般的なリストはリンクを参照ください。
https://www.mtggoldfish.com/archetype/pioneer-dimir-inverter-of-truth

青黒インバーターコンボの勝利方法は2つ。

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セルフ ライブラリーアウトによる特殊勝利
 真実を覆すものを出して、誘発型能力で墓地をライブラリに変換。ライブラリの枚数が少ない時に、タッサの神託者の誘発型能力、または、ジェイスの常在型能力で、特殊勝利する。

②真実を覆すものでのビートダウンによる勝利
 真実を覆すもの(4マナ6/6飛行)で殴りきる。墓地に送られても、別の真実を覆すものを出し、墓地を再びライブラリに変換して、殴り続ける。

 基本は除去やハンデス、カウンターでコントロールデッキとしてふるまいながら①のコンボ勝利を目指します。しかし、墓地の量がコンボを決めるには多く、こちらのコンボに除去やハンデスなどで介入してくる可能性が高いデッキが相手の場合、4マナ6/6飛行という非常に強力なクロックで②のようにクロックパーミッションとしてふるまうことがあります。このプランへの切り替えは定量的な表現が難しいため、常に両方のプランを意識してプレイできるとベストになります。


2.デッキリストとカード選定

2.1 デッキリスト
 GP、PTへ持ち込んだリストはそれぞれ以下です。

デッキリスト(GP):
https://www.mtggoldfish.com/deck/2732360
デッキリスト(PT):
https://www.mtggoldfish.com/deck/2736642
※別サイト「Goldfish」にリンクします。
 
2.2 カード選定

 GPリストがPTリストをアップデートした内容のため、GPリストをもとに解説します。

デッキリスト

『メインボード解説』

 前提条件として、このリストは3ターン目に2行動できるデッキをコンセプトとして作られています。なので、3マナ以上の呪文は極力採用せず、軽く裏目の少ない呪文が優先されています。行動数、テンポで優位に立ち、ゲームを掌握していきます。

2 《神秘を操る者、ジェイス/Jace, Wielder of Mysteries》
4 《タッサの神託者/Thassa's Oracle》
4 《真実を覆すもの/Inverter of Truth》

 本デッキの看板、タッサの神託者と真実を覆すものそれぞれ4枚採用。神秘を操る者、ジェイスは同型やコントロール相手に非常に強力ですが、アグロに対して2枚以上引きたくないため2枚採用としました。
タッサの神託者の役割は以下の3つになります。
①1/3とブロッカーとして、高いアグロ耐性があります。
②ライブラリ操作により、必要なカードを見つけることができます。なお、デッキトップに1枚置くのは任意であるため、必要なカードが見た中になければ全て下に送ることも適正です。
③墓地状況によっては6マナで真実を覆すものと同ターンにキャストすることで即勝利が可能であり、デッキの不可侵性と速度を支えています。

2 《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang》

 我々のリストの特徴は、タシグルを2枚採用していることです。役割は3つ、①プレッシャーと壁、②墓地の整理、③リソース確保です。
①巧みな軍略や小道、軽量呪文と組み合わせることで3ターン目に唱える、またはマナを構えながら唱えることができるため、隙を作らず脅威を展開していくことが可能です。
②追加の探査呪文として、真実を覆すものを唱えたあとのライブラリを減らしコンボを決めるために墓地枚数を減らすことができます。
③長期戦ではその起動型能力で、墓地の呪文を手札に加えて、リソース回復・アドバンテージを確保できます。構えながらアドバンテージを稼ぐことができるため、同型や5Cニヴ、青白コン相手に有利に立ち回ることができます。

4 《致命的な一押し/Fatal Push》
1 《究極の価格/Ultimate Price》
1 《暴君の嘲笑/Tyrant's Scorn》

 クリーチャー除去はそれぞれ上記の枚数を採用。生物デッキは赤単、黒単、白単、アーティファクトの魂込めデッキが多いと予想し、致命的な一押しは4枚。3-4マナのクリーチャーは寓話の小道で紛争を達成することで対応します。
 究極の価格は、赤単のトーブランや黒単のランクル、白単のダクソスを対処することが重要だと考え、喪心ではなくこちらを1枚採用。
暴君の嘲笑は3マナ以下の破壊と破壊できない場合でも最低限ターンを稼ぐことができ、また、魂込めがエンチャントされたダークスティールの城塞を処理できること考慮して採用しました。

4 《思考囲い/Thoughtseize》
1 《思考消去/Thought Erasure》

 手札破壊は5枚採用。序盤に相手の手札を確認してゲームプランを立てるために、コンボを決めに行く際の前方確認に、相手の有効牌を事前に処理するために利用します。思考消去は妨害しながらライブラリ操作が行える非常に優秀なカードですが、2マナと重いため1枚の採用に留めています。

3 《選択/Opt》
3 《巧みな軍略/Strategic Planning》
3 《時を越えた探索/Dig Through Time》

 選択は序盤から能動的に土地や対策スペル、コンボパーツ入手、墓地肥やしのために3枚採用。墓地を置換したライブラリから引いても、1マナで別の有効牌にできます。また、ライブラリの枚数を減らしコンボでの勝利に繋げることも可能です。ジェイスの+1能力起動に対応したジェイスへの除去に対応し、カードを引くためにも使えます。後述する巧みな軍略を採用したためにドロー過多にならないよう枚数を3枚に抑えています。
 巧みな軍略は、一度に見ることのできる枚数が多く、墓地を肥やす枚数が多いため、コンボ前は探査呪文のサポート兼コンボパーツ探し、真実を覆すものを唱えた後はライブラリを一気に減らす役割と、多様な役割を果たしてくれます。ただし、墓地を肥やしすぎてコンボが決まらなくなってしまわないように、必要以上に唱えないようにしてください。加えて1ターン目は土地がタップインすることが多く、2マナと重いので3枚の採用に留めています。
 時を越えた探索は環境最強のドロー呪文であり、探査による墓地整理、ならびに、コンボパーツと状況に合わせた有効牌を手札に加えるために使います。ゲーム中に打てても2回であり、複数枚手札に来ると身動きがとりにくくなるため3枚の採用に留めています。

2 《頑固な否認/Stubborn Denial》
1 《神秘の論争/Mystical Dispute》

 1マナで唱えることができるカウンターを3枚採用しました。
 頑固な否認は真実を覆すもの、タシグルが出ていると1マナで否認になり、獰猛非達成の場合でもパイオニアはフルタップで動くことが多いため有用です。
 1枚差しの神秘の論争は青いデッキに無類の強さを誇ることはもちろんのこと、3マナの通常キャストでもカウンターになることがほとんどであり裏目がなく、勝ち上がっていくと青いデッキが増えるであろうと予想しメインから1枚採用しました。

4 《湿った墓/Watery Grave》
4 《水没した地下墓地/Drowned Catacomb》
4 《欺瞞の神殿/Temple of Deceit》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》
1 《ヴァントレス城/Castle Vantress》
4 《寓話の小道/Fabled Passage》
3 《沼/Swamp》
4 《島/Island》

 有効牌を安定して引くため、3ターン目に安定して2アクションを取るために、あえて序盤のタップインを許容しました。占術ランドは常にドローを整理するため、4枚採用しております。寓話の小道の4枚は、致命的なひと押しの紛争のため、探査のために4枚採用しました。
 ヴァントレス城はミラーやミッドレンジ以降の相手にライブラリ操作で強力なため、1枚採用です。
 アーボーグは、多数採用した寓話の小道を沼として活用できること、沼カウントを増やすために1枚採用しました。

『サイドボード解説』

2 《エレボスの介入/Erebos's Intervention》
2 《軍団の最期/Legion's End》

 単体除去枠。黒単やはさみ相手に追放除去が重要と考え、軍団の最期を2枚採用しました。エレボスの介入はインスタントであり、アグロ相手の貴重なライフゲインと、コンボ相手の墓地対策を兼ねる多芸なカードで多くのデッキに有効であるために2枚採用しました。

1 《肉儀場の叫び/Cry of the Carnarium》
1 《衰滅/Languish》

 全体除去枠。黒単に対して強力な追放除去である肉儀場と、スピリットの破壊不能を貫通し、タシグルと真実を覆すものを巻き込まない衰滅を採用しました。

1 《ファリカの献杯/Pharika's Libation》

 ほぼ白単専用カードになりますが、軽量呪文でヘリオッドに対処できる呪文を検討した結果、このカードにたどり着きました。

3 《神秘の論争/Mystical Dispute》
1 《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》

 追加のカウンター枠。同型、青白コン、ニヴ、スピリットを主に想定して選定しました。

1 《悪夢の織り手、アショク/Ashiok, Nightmare Weaver》
1 《正気泥棒/Thief of Sanity》
1 《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope》

 追加の勝ち手段枠。同型やミッドレンジ以降の相手に有効です。それらのデッキはカードが強く、相手から奪うことが非常に強力です。リリアナは3マナでありながら盤面の取り、ハンデスに耐性を与え、奥義で勝つことができる獅子奮迅の活躍をします。他の候補としてはスカラベの神、5マナのアショクなどがあげられますが、構えながら唱えることができる軽さを重視しての選択となっております。

1 《強迫/Duress》

 追加のハンデス枠。致命的なひと押しが有効でない相手に1マナアクションが減るため、1マナで唱えることができる強迫を採用しました。

『プレイ方針解説』

 このデッキのプレイ方針として、ゲーム開始1,2ターン目に最終的にどういう勝ち方になるかのイメージをもつ必要があります。大体何ターンゲームが続くだろうから、その中で相手がうってくるであろうクリティカルな呪文と自分の通すべき呪文を考え、それをサポートするようにセットランドの順番やハンデス、ドローのうつターンを決めます。ハンデスは相手の落としたいカードを、ドローは今ほしいカードを予め想像してからうつようにするとうつタイミングがわかりやすいかと思います。
おおまかな方針としては以下になります。

 1ターン目:タップイン処理
 2ターン目:妨害または巧みな軍略
 3ターン目:ハンデス、軍略、除去、タシグル展開、タップイン処理の中から2つ
 4ターン目以降:真実を覆すものキャストあるいは妨害+時を超えた探索

 ご覧になっていただいてわかると思いますが、3マナの妨害カードは上記の流れの中でうつタイミングがありません。そのため我々は2マナ以下、さらには1マナの呪文にこだわりました。


 また、このデッキを使用するにあたり、知っておくと役に立つことをいくつかお伝えします。
・タッサの神託者のETB誘発時の特殊勝利条件は信心の数以下を参照するため、ライブラリ枚数が0であれば能力スタックで除去されて信心が0になっても勝利できます
・神秘を操る者、ジェイスの+1能力起動スタックでジェイスを除去された場合は、通常のライブラリーアウトで負けてしまうため、除去にスタックして選択などでドローして勝利します。相手に《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》がでており呪文が唱えられない場合であっても、検閲や土地をサイクリングすることでドローができます。
・寓話の小道でサーチする基本地形は、基本的に島を優先すること。ジェイスを出しながら何かしら動く場合や、神託者を2枚同時に展開する場合などがあるので青マナは4つでると望ましいです。
・ジェイスの+1能力は、自分の墓地枚数がDigを打てる枚数以上で相手が墓地を利用しないデッキの場合、相手に向かって起動したほうが真実を覆すものを引いたときに特殊勝利するまでの時間が短くなります。
・嘲笑は自分の生物を戻すことができるので、紛争の達成や、タッサの神託者を再利用することができます。
・真実を覆すものでライブラリを再構成する際、致命的なひと押しなどで場にいるタッサの神託者を除去することで勝利手段をライブラリ内に用意することができます。

3.各マッチアップのサイドインアウトおよびゲームプラン★

 この章ではパイオニアでメジャーなデッキに対するサイドインアウトと相手がとってくるゲームプラン、こちらがとるべきゲームプランを紹介いたします。

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