ソーダ水

どこかで道を踏み外したわけじゃない。

どちらかが背を向けたわけでもない。

ぼくたちはいつだってまっすぐに進んでいるだけなんだ。

その途中でたまたま道が交差して、はじめまして、それだけのことなんだ。

あの古い写真館のあたりまでは、道がつながっているみたいだから、そこまで一緒に歩きましょう。

歩いてるとなんだか楽しいね。ひとりで歩くのとまたちがう。見える景色も、聞える音も、感じる指先の温度さえ、みんなちがう。

ああ、なんだかお別れするのが、淋しくなっちゃった。

でも、ぼくにはぼくの、きみにはきみの行き先があるんだから、やっぱり無理はいえないね。

ほら、もう着いちゃった。ここに飾られてある写真は、風景ばかりで、ひとがひとりも写っちゃいない。でも、美しいや。

バイバイ。また逢えるだろうか。ぼくはまた、この場所に来たいと思うよ。きみはどうだい? わからない。そうだよね、未来のことなんて、誰もわからないよ。

そういうのに、お別れなんて名前をつけるの、やめましょう。なんだか、みじめになるから。それよりほら、きみの進む方の道は、ずいぶんとあかるくて、わくわくするじゃないか。よかった、よかった、それならよかった。グッドバイ。

はじめまして。名前なんていうの? へえ、ぼくもあそこの喫茶店まで行くつもりなんだ。よかったら、一緒にどうですか。

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