アサガオ

去年の夏、一昨年の夏、はっきり云ってぼくはなにをしていたかすぐに思い出せない。かつての夏を思い返しながら鬱々と過ごしていたかもしれない。ああ、そうだ、去年は神奈川へ行ったんだった。花火を観た。いろんな人と逢った。それは思い出した。一昨年はどうだったかな。

淋しいってささやくことは簡単だ。星が降る。

子供がぼくを指差して、この人、暗い、ってさ。そんなことわかりきってる。子供が懐く、懐かないは、なにより純粋な裁判だ。ぼくの得体の知れなさと、ウイスキーの香りとは、子供にとっちゃなんの意味もなくて、ただ面白くないって事実だけは間違いがなくて。

港に車とめて、平日の昼間、午後五時を待っていたら、見知らぬおじさんがぼくの後ろに車をとめて、降りて来た。手には釣り竿を持っている。工業地帯の、汚い海なのに、何が釣れるっていうんだろう。不思議に思って、眺めてたら、いつのまにか眠っちゃってた。目醒めれば夕暮れ。おじさんはもういない。何か釣れたかな。気になって夜も眠れやしない。いや、眠れないのは昼寝のせいか。いったいぜんたい、星が降る。

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