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ポエム帳

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酔っぱらったときに書きます。
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2016年2月の記事一覧

長い手紙を書きながら

 じんじんとベルが鳴って、朝の止まった空気の中で、私は眼を覚まします。瞼を開いたその途端に、もう、今日でもなく、明日でもなく、いつかの日のことを思い出しているのです。何気ない言葉の数々、特別でもなんでもない所作、天気や、季節や、生活のすべてのこと。何もかも私にふりかかって来ます。もう、戻れないのでしょうか。ええ、きっとそうなのでしょう。戻れないから、私はこんなに恋しいんです。朝がこんなにつめたいと

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一丁目一番一号

 夜になるとブルーが足元まで打ち寄せる。私は膝まで濡れてしまう。瞼の裏から胸のあたりまで流れた電気が、色とりどりの夢を見せて、私は孤独を忘れる。
 ひとりの部屋では海でのはなしが流れる。耳を傾けつつもそれは素通りしてゆく。思い出した孤独はふいに懐かしい焼き菓子のような香りをさせて私の鼻をかすめてゆく。菜の花畑を駆け抜けながら昭和の足音がだんだん遠くなってゆく。
 不健康、それしかなかった。私は立ち

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