「流れ星の約束」

夜の静寂が空を支配し、満天の星が広がっていた。夏の終わり、少年のケンタは、町はずれの小さな丘の上で、夜空を見上げていた。手には父親の形見である古びた天体望遠鏡が握られている。

父は星が好きだった。ケンタが小さかった頃、よく一緒に夜空を眺めて、星座の話をしてくれた。「星はね、宇宙のメッセージなんだよ」と、父はいつも楽しそうに言っていた。その言葉の意味をケンタはまだ理解できなかったけれど、星を見るたびに父の笑顔が浮かぶ。

「今日は流星群が見えるかも」と、父の声が聞こえてくる気がした。実際に流星群が見られるかはわからないが、何かが心を引き寄せるように、ケンタは丘に向かって歩き出したのだ。

夜風が頬をかすめる中、ケンタは望遠鏡を空に向け、次々と星の光を追っていった。じっと見つめていると、ふいにひとつ、星が一筋の光を引いて流れ落ちた。まるで空が一瞬、涙を流したようだった。

「お父さん、僕、ちゃんとやっていけるかな…」

ふと、ケンタの口から言葉が漏れた。新しい学校や友達、そして父のいない日々。小さな胸の中には、言葉にできない不安が渦巻いている。

そのとき、さらにもう一つ、流れ星が静かに光を引いていった。それはまるで父からの返事のように感じられた。「大丈夫だよ」と、遠い空の彼方から語りかけてくるように。ケンタは目を閉じ、流れ星に向かって強く願った。

「お父さん、僕もいつか、あなたみたいに立派になるから。だから見ていてね」

丘の上で、星々は何も言わず、ただ優しく輝いていた。その光はケンタの心に温かな勇気を灯し、これからの道をそっと照らしているようだった。

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