大好きな本『オリヒメ 人と人をつなぐ分身ロボット』吉藤オリィ著 加藤悦子文
OriHime(オリヒメ)という名前のロボットを知っていますか?
そのロボットたちは、カフェのメニューを紹介してくれたり、手をふりながら飲みものを運んできてくれたり、おいしいひき立てのコーヒーにお湯を注いでくれたりします。
そして、もちろん会話もします。
ただ、ほかのロボットと違うのは、それを操作したり、会話をしたりしているのが、AIではなく、人間---それも重度の障がいがある方やそのご家族だということです。オリヒメを動かす人を「パイロット」というのだそうですが、パイロットの方たちは、みんな自分自身の身体をほとんど動かせない身体でありながら、遠隔操作でオリヒメを動かしたり、お客さんの動きや会話に合わせて、メニューの案内をしたり、うなづいたり、首や顔を動かしたりするのです。いわば、自分は一歩も動かずとも、そこで働いているのです。
そんなすごいロボットを発明したのが、吉藤オリィさんです。
オリィさんは、大学のゴミ捨て場などから部品を集めて、試行錯誤しながら、"体は実際に行けなくても、そこにいっしょにいる気持ちになれる分身ロボット"を作ります。23才の夏でした。
その後オリィさんは、ほかにも視線だけで動かせる車椅子や、視線だけで文字を打てるパソコンも発明しました。オリィさんは、「人を癒すロボット」を作りたいと研究に励みます。考えたのは、”人の代わり”になるロボットではなく、”人と人をつなぐ”ロボットです。
これがあれば、病気の子どもや不登校の子どもが、自宅にいながら学校の友達と会話を楽しんだり、ロボットを遠隔操作して、友達に「なんでやねん」と言いながら、ロボットの手でツッコミを入れることだってできるのです。なんて画期的なんでしょう!そのほかにも、いろいろな使い道がありそうですよね。
そんなオリィさんが、あとがきで書いていたメッセージが、とてもよかったので、紹介します。
わたしが小学校のころ、不登校になって一番つらかったのは、「将来どうするんだ」と聞かれることでした。自分はいないほうがいいんじゃないかとも思っていたくらいだから、不安で考える余裕なんてないし、まして将来のことなんてわかりませんでした。その時どうしたかというと、ただひたすら好きな折り紙を折り続けていました。先生からは「折り紙では将来食べていけないぞ」と言われました。
(中略)
あなたが今夢中になれることがあれば、それに打ちこむのがよいと思います。わたしは折り紙が大好きだから、15時間、疲れを忘れて折り続けることができました。これを「夢中力」となづけました。たぶん才能っていうのはこの夢中力を発揮できるものの中にあると思います。
(中略)
自分が夢中になれるものを見つけて大事にしていると、「とがった人」になれますよ。これからはなんでもできて苦手なことがない人よりも、ひとつのことに夢中になれて深く吸収できる人が活躍できる時代になっていくと思うんです。だから、とがった人がいいんです。
みなさんも夢中になれることを見つけて、それがもし他の人には理解されなくても、自分の中ですごくいいと思えるセンスや価値観を発見していくことができたらいいですね。人からなんと言われようが、どう思われようが、あなたの好きなことを大事にしてください。そのことがあなたの人生を形づくっていくのだと思います。
吉藤オリィ
『オリヒメ 人と人をつなぐ分身ロボット』
吉藤オリィ 著
加藤悦子 文
子どもの未来社より
誰にも、夢中になれることがあるはず。それは、その人の才能。
夢中になれることをとことんやって、その才能を伸ばしていって、「とがった人」、つまり、人の思いつかないようなアイディアを思いついたり、今までになかったものを創造したりする人、新しい価値を生み出す人になろうぜ!ということだと感じました。
もし、興味がわいたなら、ネットで「分身ロボット オリヒメ」などと検索して、株式会社オリィ研究所のホームページを見てみてください。見ためのかわいさ・かっこよさと、人と人をつなぐすごい機能を備えている新オリヒメの姿は、必見です!